高齢化社会の対応策となるか?「終身建物賃貸借事業」【更新】 | 埼玉の不動産投資・収益物件・建物管理|株式会社エストハウジング

不動産投資コラム

高齢化社会の対応策となるか?「終身建物賃貸借事業」

高齢化社会の対応策となるか?「終身建物賃貸借事業」








深刻な日本の高齢化問題
少子化が進み日本の人口が減少している一方で、65歳以上の人口は増加を続けています。
このような状況においても、高齢者の住宅環境は改善しているとは言い難いのが現状。
賃貸住宅においては、「家賃の滞納」「孤独死」「室内での事故」「遺留品の処理に困る」などの不安から、大家さんが高齢者の入居を拒否するケースも多々あります

そこで注目したいのが、「終身建物賃貸借事業」
知事の認可を受けた事業者が、高齢者に対し、終身にわたって住宅を賃貸する事業を行うことができる制度です。
平成13年に創設され、これまでの認可実績は約1万戸(平成28年度末時点)となっています。
昨年の9月に、より利用しやすくするために改正されました

弊社発行の賃貸経営新聞2月号でも触れており、お客様からのお問い合わせもありました。
そこで今回は、この「終身建物賃貸借事業」についてお話ししていきたいと思います。



【制度の内容】


 1.入居者
  ・高齢者(60歳以上)であること。
  ・単身または同居者が高齢者親族であること(配偶者は60歳未満も可)。

 2.住宅の基準
  ・段差のない床、浴室等の手すり、幅の広い廊下等を備えていること。
  ・前払家賃を受領する場合にあっては、当該前払家賃の算定根拠が書面で明示され、必要な保全措置がこうじられるものである。 など

 3.高齢者が死亡した場合の同居者の継続居住
  ・同居者は、高齢者の死亡後1月以内の申出により継続居住可能。

 4.解約事由
  ・家主からの解約申入れは、住宅の老朽等の場合に限定。
  ・借家人からの解約については
   ①療養、老人ホームへの入所、親族との同居等が理由の場合は、解約申入れ1か月後に契約は終了。
   ②上記以外の理由の場合は、解約申入れ6か月後に契約は終了。

 5.その他の借家人に対する配慮
  ・借家人が希望すれば、終身建物賃貸借契約の前に定期借家により1年以内の仮入居が可能。



【入居者(賃借人)のメリット】


終身建物賃貸借は、賃借人の死亡時まで賃貸借が存続するため、賃借人にとっては、住み慣れた家に死ぬまで居住できるということの他、以下のようなメリットがあります。
 

 ①賃貸人(認可事業者)からの解約申入れ自由が限定されている
  ※家主からの解約申入れは、住宅の老朽等の場合に限定されます。

 ②1年以内の定期建物賃貸借により、仮入居が可能
  ※終の棲家として入居したものの、近所づきあいなどの問題で住み続けられないこともあり得ます。
   そのような事態への対策として事前に最長1年のお試し期間を設けることができるのです。

 ③死亡した賃借人と同居していた配偶者または60歳以上の親族は、継続居住が可能。
  ※配偶者死亡後も同居者は住む場所に困ることがありません。

 ④前払金の保全措置がとられている
  ※同事業者の認可物件に入居する場合、通常よりも長期間分の前家賃などを求められることもあります。
   その家賃分住むことなく亡くなったとしても、残りの前払金が配偶者や相続人などへ確実に戻せるように保全措置がとられています。



【大家さん(賃貸人)のメリット】


賃借権が相続人に相続されないという点において、賃貸人にとっては、以下のようなメリットがあり、身寄りのない高齢者等を受け入れるにあたり、セーフティネット住宅での活用が期待されます。


 ①無用な借家契約の長期化を避けることができる
  ※通常だと賃借人の死亡後は契約が相続人に引き継がれてしまうため、相続人が見つからない場合などは契約を解除することができずに空室の状態が続いてしまうことがあります。同事業で認可を受けた物件ならば賃借人が死亡した時に契約が終了するので、その心配がありません。

 ②残置物の処理等を円滑に行うことができる
  ※通常の契約だと、遺留品は相続人の許可がないと処理をすることができません。

 ③相続人への明渡し請求に伴う立退料請求されるおそれがない
  ※契約が相続人へ引き継がれないので、立退料は発生しません。



【課題と改善策】


しかしながら、『必要な書類が多く手続きが煩雑であること』『サービス付き高齢者住宅と同等のバリアフリー基準が求められておりハードルが高い』『そもそも制度が知られていない』などの理由から、民間賃貸住宅における認可実績は非常に少ないのです。

この状況を打開しようと、認可基準等の緩和等が実施されました。



終身建物賃貸借の面積・バリアフリー基準の緩和について



終身建物賃貸借の申請に係る添付書類の緩和について







「終身建物賃貸借事業」は平成13年に創設され、これまでの認可実績は、約1万戸(平成28年度末時点)となっていますが、サービス付き高齢者向け住宅がほとんどでした。
サービス付き高齢者向け住宅は、設備やサービスが充実しているために月額費用などが高くなる傾向があります。
今回の改正により、一般の賃貸住宅の認可住宅が増え、安価な住居が高齢者に提供されることに期待が寄せられています

単身の高齢者も増加している昨今、賃貸物件の需要は高まっています。
年金という定期収入がある高齢入居者に向けた賃貸経営を検討してみるのも、一つの手段ではないでしょうか。




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