不動産業のIT化【電子契約】について考える【更新】 | 埼玉の不動産投資・収益物件・建物管理|株式会社エストハウジング
不動産投資コラム
不動産業のIT化【電子契約】について考える
不動産業のIT化【電子契約】について考える
新型コロナウイルス感染症対策として在宅ワーク・テレワークの導入を進める企業が増えていますが、緊急事態宣言解除後もその流れは変わらず、「働き方」そのものが変わろうとしているように感じます。
そのような中、法整備や電子証明の進歩により『電子契約』を導入・検討する企業が増えています。
今回は『電子契約』の仕組みや、メリット・デメリット、注意点等について考えてみたいと思います。
不動産業における電子契約
不動産業界においては、賃貸住宅の賃貸借契約書の電子交付、および個人向けを含む売買取引時の重要事項説明書の電子交付(IT重説)の実証実験が2019年10月1日より開始されています。
その目的は、不動産に関する説明や取引の円滑化・効率化、それらを含めた市場活性化と説明されています。
売買契約時のIT重説については、2019年10月から2020年9月末までの1年間と、比較的長い実験期間が設定されています。
実証実験には流通大手から中堅、中小の不動産会社59社が参加しており、期間終了後に特段の課題がなければ2020年10月以降に正式に運用が開始される見込みとなっています。
賃貸借契約でのIT重説は2017年から導入されており、売買契約時のIT重説についても今後が注目されています。
一方、賃貸住宅の賃貸借契約書の電子交付実証実験は2019年10月から12月までの3ヵ月間で113社が参加し、現在は宅建業法改正に向けて準備が進められています。
電子契約とは
そもそも、『電子契約』とは何でしょうか。
電子契約とは、契約書類の発行や締結、管理までの一連のプロセスをインターネット上で行うことです。
インターネット上で取引先と書面を交わしで電子署名を行い、契約を締結します。
電子契約では文書の作成・発行を電子的に行い、文書はサーバー上に保管されることになりますので、書類を保管するスペースの確保や管理コストが不要になります。
電子契約の仕組み
【電子署名】公開鍵暗号方式を用いて作成者を特定する
紙の契約書では、押印や手書きでの署名により、本人の意思に基づき作成されたものと見なされます。
一方、電子文書には押印や直接署名することはできません。
デジタルで印影や署名を作成して電子文書に上書きができますが、文書の正当性は証明できません。
なぜなら、デジタル画像は複製できるからです。
そのため、認証局が発行した「電子証明書」により電子署名を施すことで、電子文書の正当性を証明します。
電子証明書は公開鍵暗号方式を用いて作成者を特定し、電子契約書の正当性を証明するものです。
公開鍵暗号方式では「暗号鍵」と「複号鍵」のペアを作成し、複号鍵は取引先企業へ送信します。
暗号鍵は電子文書作成者がパスワードで管理し、その鍵を基にデータを暗号化します。
取引先企業は添付された複号鍵を基にデータの復号を行うのです。
【タイムスタンプ】契約が行われた日時を明確にする
電子署名が施された日時はシステム上の表記であり、設定を変えれば改ざんが可能です。
契約が締結された日時が正しいことを証明するため、タイムスタンプと呼ばれる仕組みを利用します。
データ通信協会の認定を受けた正確な時刻を管理する第三者機関のサーバにより、タイムスタンプが付与されます。
これにより、契約が行われた日時が正当であることを証明できるのです。
また、タイムスタンプにはその時刻に電子文書が存在していたこと、それ以降は文書が改ざんされていないことを証明する役割があります。
電子契約のメリット
電子契約には、紙ではなくインターネット上で契約を交わせるからこそのメリットがいくつもあります。
■業務の効率化■
電子契約を行うメリットの一つが、業務の効率化を図れることです。
書面による契約の際には、取引先まで足を運ぶか、郵送により契約書を行き来させる必要があります。
しかし、インターネットを介して電子契約を行うため、成立までの時間を短縮化でき、それに伴う手間も省くことができるのです。
■物理的な保管スペースが不要■
企業は文書を一定期間保存する義務があるため、物理的な保管スペースが必要でしたが、e-文書法や電子帳簿保存法の施行により、文書ファイルを電子化して保存することが認められました。
これにより、電子契約を行ったとしても保管場所に困ることはなく、なおかつデータベースに保管されるため、瞬時に内容をチェックすることができるという利点もあります。
■印紙代が不要■
電子契約では、書面と違って印紙を貼付する必要がありません。
契約金額によって課税額が増える印紙代に予算を回す必要がなくなるので、経費削減もできるというメリットがあります。
電子契約のデメリット
■流出の危険性■
管理サーバーにてデータを一括管理しているケースが多いため、セキュリティ対策をしっかり講じていないとデータが流出してしまう危険性があります。
電子署名による電子契約に限った話ではありませんが、あらゆる企業が様々な情報をデータとして保全し、管理しています。
電子契約サービスを提供している企業も、やはりサーバーのセキュリティには特に気を使っています。
■全ての契約に活用できない■
売買契約や秘密保持契約、業務委託契約などでは電子契約が行えますが、契約書の中には書面での締結が義務化されているものがあります。
・投資信託契約の約款
・定期借地契約
・労働条件通知書の交付
上記の契約には電子契約は利用できませんので、注意が必要です。
■取引先の理解を得る必要がある■
電子契約を締結するためには、お互いが電子契約を締結できる環境がある必要があります。
たとえば相手が電子契約を導入できるように整備していない場合は、電子契約を締結することができません。
電子契約を締結できるようにするためには、相手にも環境を整備してもらう必要があります。
さらに、認定事業者のサービスを利用する場合は、印鑑証明書や登記簿謄本が必要となり手間がかかってしまうことや、電子契約サービス会社を利用する場合は、アカウント登録などの手間も発生します。
また、場合によっては加入時やサービス利用時に費用が発生するというデメリットもあるのです。
これらを取引先に理解してもらうには、しっかりと電子契約のメリットを伝える必要があるでしょう。
電子契約の注意点
現在普及しているクラウド型の電子契約サービスの多くは、実は当事者同士が電子署名をしない「立会人型」と呼ばれる形式のものです。
PDFなどの書類データをネットに上げて、これらを双方が確認、合意すれば、立ち会った電子契約サービス会社が自らの名義で「契約書が甲と乙によるものであることを確認した」と電子署名します。
契約の当事者が、電子署名の印鑑証明に相当する電子証明書などを取得しなくてもすむため手続きは簡単ですが、第三者が電子署名した契約書が法的に有効なのかは、実際のところ実に曖昧です。
立会人型の場合は「本人」の電子署名ではないので、電子署名法の規定では、文書は本物として成立したと認められない可能性が高く、法的な場での有効性には不安が残るのも事実です。
従来有効とされてきた電子署名は、ICカードを用いた方法や、クラウド上であっても「当事者型」と呼ばれる形式のもの。
利用者が認証サービスを手掛ける会社に自らを証明する書類などを提出し、事業者が電子証明書の入ったICカードや電子ファイルを発行、それを使って当事者同士が署名をするというものです。
ただ双方が電子証明書を持っていなくてはならないという面倒さもあり、電子契約サービス会社による「立会人型」が普及しているものと思われます。
いかがでしたでしょうか。
新型コロナウイルスや働き方改革の影響も受け、電子契約の需要は今後さらに高まると言われています。
賃貸借契約においては、実現までもうすぐ目の前のところまできています。
導入企業にとってはもちろんですが、ご契約される側のお客様におきましても、基本的な仕組みや法的な問題、契約上の問題も理解した上でご利用になることをおすすめします。
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新型コロナウイルス感染症対策として在宅ワーク・テレワークの導入を進める企業が増えていますが、緊急事態宣言解除後もその流れは変わらず、「働き方」そのものが変わろうとしているように感じます。
そのような中、法整備や電子証明の進歩により『電子契約』を導入・検討する企業が増えています。
今回は『電子契約』の仕組みや、メリット・デメリット、注意点等について考えてみたいと思います。
不動産業における電子契約
不動産業界においては、賃貸住宅の賃貸借契約書の電子交付、および個人向けを含む売買取引時の重要事項説明書の電子交付(IT重説)の実証実験が2019年10月1日より開始されています。
その目的は、不動産に関する説明や取引の円滑化・効率化、それらを含めた市場活性化と説明されています。
売買契約時のIT重説については、2019年10月から2020年9月末までの1年間と、比較的長い実験期間が設定されています。
実証実験には流通大手から中堅、中小の不動産会社59社が参加しており、期間終了後に特段の課題がなければ2020年10月以降に正式に運用が開始される見込みとなっています。
賃貸借契約でのIT重説は2017年から導入されており、売買契約時のIT重説についても今後が注目されています。
一方、賃貸住宅の賃貸借契約書の電子交付実証実験は2019年10月から12月までの3ヵ月間で113社が参加し、現在は宅建業法改正に向けて準備が進められています。
電子契約とは
そもそも、『電子契約』とは何でしょうか。
電子契約とは、契約書類の発行や締結、管理までの一連のプロセスをインターネット上で行うことです。
インターネット上で取引先と書面を交わしで電子署名を行い、契約を締結します。
電子契約では文書の作成・発行を電子的に行い、文書はサーバー上に保管されることになりますので、書類を保管するスペースの確保や管理コストが不要になります。
電子契約の仕組み
【電子署名】公開鍵暗号方式を用いて作成者を特定する
紙の契約書では、押印や手書きでの署名により、本人の意思に基づき作成されたものと見なされます。
一方、電子文書には押印や直接署名することはできません。
デジタルで印影や署名を作成して電子文書に上書きができますが、文書の正当性は証明できません。
なぜなら、デジタル画像は複製できるからです。
そのため、認証局が発行した「電子証明書」により電子署名を施すことで、電子文書の正当性を証明します。
電子証明書は公開鍵暗号方式を用いて作成者を特定し、電子契約書の正当性を証明するものです。
公開鍵暗号方式では「暗号鍵」と「複号鍵」のペアを作成し、複号鍵は取引先企業へ送信します。
暗号鍵は電子文書作成者がパスワードで管理し、その鍵を基にデータを暗号化します。
取引先企業は添付された複号鍵を基にデータの復号を行うのです。
【タイムスタンプ】契約が行われた日時を明確にする
電子署名が施された日時はシステム上の表記であり、設定を変えれば改ざんが可能です。
契約が締結された日時が正しいことを証明するため、タイムスタンプと呼ばれる仕組みを利用します。
データ通信協会の認定を受けた正確な時刻を管理する第三者機関のサーバにより、タイムスタンプが付与されます。
これにより、契約が行われた日時が正当であることを証明できるのです。
また、タイムスタンプにはその時刻に電子文書が存在していたこと、それ以降は文書が改ざんされていないことを証明する役割があります。
電子契約のメリット
電子契約には、紙ではなくインターネット上で契約を交わせるからこそのメリットがいくつもあります。
■業務の効率化■
電子契約を行うメリットの一つが、業務の効率化を図れることです。
書面による契約の際には、取引先まで足を運ぶか、郵送により契約書を行き来させる必要があります。
しかし、インターネットを介して電子契約を行うため、成立までの時間を短縮化でき、それに伴う手間も省くことができるのです。
■物理的な保管スペースが不要■
企業は文書を一定期間保存する義務があるため、物理的な保管スペースが必要でしたが、e-文書法や電子帳簿保存法の施行により、文書ファイルを電子化して保存することが認められました。
これにより、電子契約を行ったとしても保管場所に困ることはなく、なおかつデータベースに保管されるため、瞬時に内容をチェックすることができるという利点もあります。
■印紙代が不要■
電子契約では、書面と違って印紙を貼付する必要がありません。
契約金額によって課税額が増える印紙代に予算を回す必要がなくなるので、経費削減もできるというメリットがあります。
電子契約のデメリット
■流出の危険性■
管理サーバーにてデータを一括管理しているケースが多いため、セキュリティ対策をしっかり講じていないとデータが流出してしまう危険性があります。
電子署名による電子契約に限った話ではありませんが、あらゆる企業が様々な情報をデータとして保全し、管理しています。
電子契約サービスを提供している企業も、やはりサーバーのセキュリティには特に気を使っています。
■全ての契約に活用できない■
売買契約や秘密保持契約、業務委託契約などでは電子契約が行えますが、契約書の中には書面での締結が義務化されているものがあります。
・投資信託契約の約款
・定期借地契約
・労働条件通知書の交付
上記の契約には電子契約は利用できませんので、注意が必要です。
■取引先の理解を得る必要がある■
電子契約を締結するためには、お互いが電子契約を締結できる環境がある必要があります。
たとえば相手が電子契約を導入できるように整備していない場合は、電子契約を締結することができません。
電子契約を締結できるようにするためには、相手にも環境を整備してもらう必要があります。
さらに、認定事業者のサービスを利用する場合は、印鑑証明書や登記簿謄本が必要となり手間がかかってしまうことや、電子契約サービス会社を利用する場合は、アカウント登録などの手間も発生します。
また、場合によっては加入時やサービス利用時に費用が発生するというデメリットもあるのです。
これらを取引先に理解してもらうには、しっかりと電子契約のメリットを伝える必要があるでしょう。
電子契約の注意点
現在普及しているクラウド型の電子契約サービスの多くは、実は当事者同士が電子署名をしない「立会人型」と呼ばれる形式のものです。
PDFなどの書類データをネットに上げて、これらを双方が確認、合意すれば、立ち会った電子契約サービス会社が自らの名義で「契約書が甲と乙によるものであることを確認した」と電子署名します。
契約の当事者が、電子署名の印鑑証明に相当する電子証明書などを取得しなくてもすむため手続きは簡単ですが、第三者が電子署名した契約書が法的に有効なのかは、実際のところ実に曖昧です。
立会人型の場合は「本人」の電子署名ではないので、電子署名法の規定では、文書は本物として成立したと認められない可能性が高く、法的な場での有効性には不安が残るのも事実です。
従来有効とされてきた電子署名は、ICカードを用いた方法や、クラウド上であっても「当事者型」と呼ばれる形式のもの。
利用者が認証サービスを手掛ける会社に自らを証明する書類などを提出し、事業者が電子証明書の入ったICカードや電子ファイルを発行、それを使って当事者同士が署名をするというものです。
ただ双方が電子証明書を持っていなくてはならないという面倒さもあり、電子契約サービス会社による「立会人型」が普及しているものと思われます。
いかがでしたでしょうか。
新型コロナウイルスや働き方改革の影響も受け、電子契約の需要は今後さらに高まると言われています。
賃貸借契約においては、実現までもうすぐ目の前のところまできています。
導入企業にとってはもちろんですが、ご契約される側のお客様におきましても、基本的な仕組みや法的な問題、契約上の問題も理解した上でご利用になることをおすすめします。
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