【擁壁のある物件を購入したい!】注意したいリスクとポイント【更新】 | 埼玉の不動産投資・収益物件・建物管理|株式会社エストハウジング

不動産投資コラム

【擁壁のある物件を購入したい!】注意したいリスクとポイント




毎年各地で起こっている擁壁の崩落事故。
2021年6月に起きた大阪市西城区の住宅地擁壁崩落事故は、まだ記憶に新しいことと思います。
幸い今回の事故でケガ人は出ていませんが、一歩違えば更なる大惨事になっていたことでしょう。

物件を購入する際、「擁壁」があるかどうかは重要なポイントになります。
擁壁のある物件購入の際のリスクやポイントをしっかり確認しましょう。





■■擁壁とは?■■


擁壁とは、高低差のある土地で側面の土地が崩れるのを防ぐために設置された壁上の構造物のことです。
高台や丘にある住宅地は、隣家との間に土の安息角(土を積み上げたときに崩れず安定する最大角度)を超える大きな高低差が生まれる場合があり、強固なコンクリートなどで支えなければ、土・建物の荷重や雨水の水圧で崩れてしまう危険性があります。
擁壁には、崖の崩落リスクを防止し、建物を守る役割があるのです。

擁壁や崖地・斜面には、大きなコストとリスクが隠されていることがあります。
擁壁のある物件の購入を検討している場合には、擁壁に関する法律である「宅地造成等規制法」の内容についても理解しておく必要があります。

宅地造成等規制法は、崖崩れや土砂の流出による災害防止のために1962年に施行された法律です。
宅地造成等規制法では、都道府県知事等が崖崩れが生じやすい区域を規制区域に指定し、その区域内で行われる宅地造成について規制を行います。
対象となる工事は着工前に許可が必要となり、定められた技術基準に達していない擁壁は造ることができません。
基準に適合していれば、竣工後に「検査済証」が交付されます。

擁壁がある土地の所有者には、擁壁の維持管理をする義務があり、それを怠った場合は改善勧告または改善命令を受けることもあります。





■■擁壁の種類■■


擁壁は工法や材料によってさまざまな種類があります。
ここでは宅地に用いられる擁壁についてご紹介します。



RC造擁壁
RC造擁壁とは、コンクリート製の擁壁のことです。
鉄筋コンクリート造と無筋コンクリート造の2種類に大別されます。
立地条件や斜面の形状、崩落のリスクのレベルによって、逆T型やL型、重量式、もたれ式、片持梁式などの形状の擁壁が造られます。



間知(けんち)ブロック擁壁
いくつものブロックを組み合わせて設置された擁壁が、間知ブロック擁壁です。
間知ブロックは、通常のブロックとは違い斜めに積み上げるコンクリートブロックで、石垣などにもよく使われています。
高速道路を走行中にも、山の斜面などで見かけるのではないでしょうか。
間知ブロック擁壁は、現行基準を満たしていれば高さ5mまでの擁壁設置が可能となります。
また、外側からは見えませんが、一定間隔で鉄筋コンクリート造の控え壁が造られています。
一般的に、高低差の大きい住宅地に用いられており、壁面が傾いていることが特徴です。



大谷(おおや)石積み擁壁
大谷石積み擁壁とは、大谷石を積み上げて造られた擁壁のことです。
大谷石とは、軽石凝灰岩の一種で比較的加工がしやすい石材であることから、昔から外壁や土蔵の建材などに使用されてきました。
しかし、大谷石造りは経年により劣化していくために、安全性が確保できないと判断され、現在は建築違反や既存不適合とされます。


玉石造りは安全上の構造計算が難しく、二段擁壁・二重擁壁についても現行の建築基準法では認められないのが一般的で、役所に確認が必要です。
またブロック塀で擁壁を造るのは禁止されています。





■■擁壁をめぐるトラブル■■


擁壁は隣地との境界に作られることが多く、隣人トラブルの元になりやすいので注意が必要です。
通常隣地との高低差があれば、高い方の敷地の所有者が擁壁を造る責任を負います。
しかし、状況によっては所有者同士の話し合いで負担を折半することもあり、一概には言えません。
所有者が替わればどのような経緯で擁壁が造られたのか、誰が費用を負担したのかなどがわからなくなるので、トラブルになりやすいのです。
宅地の擁壁が崩れて被害が発生した場合、所有者の責任になります。
損害賠償責任が発生し、再建築の際は数百万円から数千万円という多額の費用がかかります。





■■擁壁トラブルを避けるには?■■


一番のトラブル回避法は、新たに物件を購入する際に擁壁についてしっかり調べておくことです。
擁壁のある物件を購入する場合は、「擁壁の適合・不適合を事前に確認しておくこと」「隣地との境界を確認しておくこと」が必要不可欠です。

擁壁の適合・不適合については、検査済証が交付されているかどうかを調べましょう。
不動産会社に聞いてもいいですが、その際は口頭だけでなく、きちんと書類を出してもらうように交渉しましょう。
役所などで調べてもらうことも可能です。

境界については、図面や測量図を持って必ず現地へ行き、境界杭を確認しましょう。

また、意外と落とし穴になりがちなのが、擁壁が2m以下の場合です。
2m以下の場合は確認申請や検査義務が不要なので、万が一きちんと構造計算されていない強度不足のものだった場合、公的な判断基準がありません。
調査もより難しくなります。
また、擁壁自体に問題がなくても、擁壁に近い部分に建物排管があると建物下の地盤にゆるみがある場合も見受けられます。





■■擁壁調査に関する3つの安全項目■■


擁壁の耐用年数は約20~50年です。
しっかりと基準をクリアして頑丈に造られた擁壁でも、年数が経過するにつれて徐々に劣化していくものです。
たとえ新しく造られた擁壁でも、壁面に亀裂が入っていたりひび割れの跡があったりすると、将来的に修繕が必要になる場合があります。



①表面の状態を確認する
まず擁壁の表面をチェックし、どのくらい劣化しているのかを見ます。
亀裂は入っていないか、はらみはないかなどを目で確認しましょう。
さらに二段擁壁や二重擁壁は違反建築の可能性がありますので、こちらも同様にチェックします。
亀裂が大きく入っている、そもそもすでに傾いているといった場合は、古い擁壁を取り壊して新しいものを建設しなければなりません。
擁壁の表面から水が出ていないか(湿っていないか)、苔が生えていないかもチェックします。



②材質と構造はどんなものか
擁壁の材質と構造も大事なポイントです。
自然石積み擁壁は、擁壁として認められていません。
現在は、人工的に作られたブロックなどが使用され、コンクリートで積み上げ、十分な強度がある擁壁のみが認められています。
古い物件を購入する場合は特に注意しましょう。
擁壁が2mを超える場合は、管轄の役所で工作物建築確認及び検査済証を取得して確認できます。



③適切な水抜き穴が設置されているか
擁壁は、壁面の面積3平方メートルにつき1か所以上、内径7.5cm以上の水を抜くための穴(水抜き穴)が必要です。
水抜き穴が十分あるか確認しましょう。
水抜き穴に土や草がつまっていないかも同様にチェックします。


これらをチェックすることによって、

■擁壁のひび割れや変形がある → 強度が低くなっている可能性がある
■擁壁の隙間が白くなっている → 擁壁の背面がひび割れしている可能性がある
■排水に問題がある      → 擁壁に水圧がかかり変形や崩壊の可能性がある


といった内容のことを推測することができます。
新しい擁壁であれば問題ないというわけではないので、必ず上記ポイントを確認するようにしましょう。




いかがでしたでしょうか。
物件の安全を守る意味で大切な擁壁にはいくつかの種類があり、中には古くて劣化が進んでいる擁壁や、現行の建築基準を満たしていない擁壁もあります。
擁壁が崩れて近隣の方に被害を与えてしまった場合、損害賠償責任が発生します。
そのような事態を招かないためにも、現行の建築基準を満たしていない擁壁や亀裂・ひび割れなどが入っていて補強工事が必要な擁壁がある物件の購入は、できる限り避けたいところです。
物件購入後に擁壁が不適合だと判断した場合、建替えや修復工事が必要となりますが、その費用はかなり高くつく場合もあります。
物件を購入する際は擁壁が現行の建築基準を満たしているかどうかを確認し、場合によっては地盤調査の実施なども視野に入れるなど、しっかりとした対策をすることが大切です。