2021年10月号エスト賃貸経営新聞の賃貸経営新聞 | 埼玉の不動産投資・収益物件・建物管理|株式会社エストハウジング

2021年10月号エスト賃貸経営新聞

景気は一時停滞するものの緩やかに回復していくと思われます
コロナ禍の影響を受けて「物件管理」に新たな動き


コロナ禍にあっても賃貸住宅市場は底堅い傾向を見せています。
基本的には生活に必要な住居の賃貸住宅を貸与するのですから、そうそう大きな変化は起きません。
落ち着きを見せている賃貸市場における最新の動向を、公表されたデータからまとめてみました。


まずいつもの通り、最新の景気動向を見ていきます。
景気の指標となっている内閣府の9月公表の景気ウォッチャー調査では、「景気は新型コロナウイルス感染症の影響により、持ち直しに弱さがみられる。先行きについては、内外の感染症の動向に対する懸念が強まっているが、ワクチン接種の進展等による持ち直しの期待がみられる」とまとめています。

また、(株)帝国データバンクの8月調査は「8月の景気DIは3ヵ月ぶりに悪化。国内景気は、感染者数急増に記録的大雨の影響も加わり、一時的な足踏み状態となった。今後は、緊急事態宣言等で一時停滞するものの、緩やかな回復が続くと見込まれる」と捉えています。
今後の景気動向は、一日も早いワクチン接種の広がりと、新規感染者の減少にかかっています。

ところで、昨年から続くコロナ禍の影響を受けて市場では、顧客対応としてリモート接客とオンライン内見が増えていますが、物件を安全に管理するために「物件管理」を新たに依頼されるオーナー様がここへきて増加しているのも特筆されます。

市場の底堅い家賃の傾向について、不動産情報サービスのアットホーム(株)が発表した全国主要都市の「賃貸マンション・アパート」募集家賃動向(令和3年7月)によると、「マンションの平均募集家賃は、面積帯における傾向の違いが続き、シングル向きが全9エリア中6エリアで前年同月を下回る。大型ファミリー向きは6エリアで上回り、うち神奈川県・埼玉県の2エリアが平成27年1月以降最高値を更新。アパートは首都圏で上昇が続き、東京都下・神奈川県・埼玉県・千葉県が全面積帯で前年同月を上回る」としています。

マンション・アパート(一棟)の「不動産価格指数」は上昇傾向

一方、先行きの不動産需要を予測する地価動向について、国土交通省の令和3年第2四半期の「地価LOOKレポート」の結果によると、全国100地区のうち上昇地が28地区から35地区に増加し、横ばいが45地区から36地区に減少。
下落が27地区から29地区に増加となりました。

同レポートは、「住宅地では下落地区数が前期に引き続き0地区となり、横ばい地区数が減少し、上昇地区数が更に増加。商業地では大きな変化はないが、一部で弱い動きが見られた」とまとめています。

なお、国土交通省が公表した令和3年第1四半期分のマンション・アパート(一棟)の「不動産価格指数」は、平成22年の平均を100として、前期比0.4%の増の139.6で、10年来上昇傾向を見せています。





ニュースフラッシュ
7月の貸家の新設着工5ヵ月連続の増加
賃貸住宅への力強い投資意欲が見られる



金融機関の貸し出しの厳格化とともに、賃貸住宅市場の需給調整などが影響して、貸家の新設着工数の低迷が続いていましたが、ここへきて本格的な回復の兆しを見せています。

国土交通省がこのほど発表した7月の貸家の新設住宅着工数が、前年同月比5.5%増の2万9,230戸で、5ヵ月連続の増加となりました。

公的資金による貸家は前年同月比5.2%の減少でしたが、民間資金による貸家が同6.8%増加したため、貸家全体で増加となったものです。
これで令和3年1~7月の7ヵ月の合計は、前年比3.1%増の18万2,526戸となりました。

貸家の7月の新設着工で前年同月比プラスとなったのは1府27県に及び、地域別では北海道、東北、北陸を除く全国でプラスとなり、都市圏別でも首都圏以外がプラスとなっています。

このまま新設傾向が続くか、修正局面を迎えるのか、もう少し様子を見ないと分かりませんが、市場において賃貸住宅への力強い投資意欲が戻っているのは間違いないようです。





優遇税制期間終了迎える「生産緑地の2022年問題」
買い取り申出可能時期延長の新制度を創設


優遇税制期間が終了する「生産緑地」の解除まで数ヵ月となりました。
「生産緑地の2022年問題」、現状、どのような広がりを見せようとしているのでしょうか。


生産緑地とは市街化区域内の500平方メートル以上の農地で、営農継続の意思があれば30年間、農地等として管理することで宅地への転換ができない土地をいい、市街化区域農地は宅地並みに課税されるのに対し、生産緑地は軽減措置が講じられます。

固定資産税の宅地並みが農地並みに軽減され、相続税も納税猶予が受けられます。
指定から30年間を経過するのが2022年、つまり来年で、生産緑地として継続するか、解除するかの選択が求められていました。

「生産緑地の2022年問題」のポイントは、令和4年に生産緑地の農地が宅地として大量に市場に供給される、もしくは宅地化供給の圧迫の要因になることが予測され、多くの生産緑地が売りに出されると、不動産価格が不安定になって、市場が大きな影響を受ける懸念が広がる、というものです。

国土交通省のデータによりますと、この6月時点で三大都市圏の市街化区域内農地の約5割を生産緑地が占め、令和4年には生産緑地地区のうち、面積ベースで概ね8割が指定から30年が経過します。

宅地需要の沈静化で住宅供給推進の必要性が低下

こうしたことがあって国は、「2022年問題」に備えるために、平成29年5月に生産緑地法の一部を改正し、生産緑地地区の都市計画決定後30年経過するものについて、買い取り申出可能時期を10年延長できる「特定生産緑地制度」を創設しました。

これにより、申出基準日以降も、引き続き生産緑地が保全され、良好な都市環境の形成が図られる筋道ができました。

その背景には、「全国的に多くの都市が人口減少局面に移行し、宅地需要が沈静化しつつある中、農地の転用により住宅供給等を推進する必要性は低下している」(国土交通省)ことが挙げられます。

年を越して令和4年を迎えると、「生産緑地の2022年問題」に直面するのですが、国がここ数年の間に法改正で制度面の整備を図ってきたので、大きな混乱も起きずに現実的な動きとなりそうです。

税制等整備もさることながら、不動産市場が変化して住宅地のニーズが後退したことも、2022年問題の影響を限定的にしているようです。





賃貸経営ワンポイントアドバイス
「出口戦略」で攻めの賃貸経営にステップアップ
「等価交換方式」を活用して土地の有効活用図る



タイムリーに処分して再投資

賃貸経営を長期の視点で考える場合、「出口戦略」は大切な選択肢の一つです。
出口戦略と言えば後ろ向きのイメージが強いのですが、‟損切り”を明確にし、攻めの経営として次のステップを狙うオペレーションともいえます。
収益改善の方法として、資産の組み換えでリスク分散を図る一方、財務強化を実現する手法と位置付けられます。

現行の賃貸経営が軌道に乗らない場合などに、思い切った方策も必要であることから、物件を「売却」して現金を得る、あるいは今の建物を壊して、「駐車場」にしたり、「土地を貸す」という方法があります。

「組み換え」や処分して得た資金で、高収益が見込まれる物件に「買い替え」たり、「資産を分散」化して、収益の多様化を図り、不動産収益の向上を果たす方法が一般化しています。
例えば、所有する物件が遠方の場合、売却して代わりに近場で目が行き届く物件を購入するという方法があります。
賃借人が入っているオーナーチェンジであれば、売るにも買うにも条件がよくなってリスクが幾分なりとも軽減されます。

また、所有している土地の有効活用として、「等価交換方式」があります。
オーナーが所有する土地に、事業パートナーとなるハウスメーカー等が事業資金を負担してアパート・マンションを建てて運営するスタイル。
土地と建物を交換するため、自己資金や借入金がなくても賃貸住宅経営ができるところにメリットがあります。
路線価の高い土地や土地に古い建物が建っていて、その土地を有効活用する時などにマッチしています。

このようにいろいろな方法が考えられますが、実際取り組むとなればトータルプロデュースするプロパティマネジメント(不動産管理)​​​​​​のノウハウが必要とされるだけに、プランの選別には慎重な対応が望まれます。
「出口戦略」について、3回シリーズで取り上げてみます。





ちょっと一服
「ウッドショック」が落ち着きを見せる
今後は末端価格の値動きに注意



自動車メーカーがコロナ感染拡大と車載半導体の供給不足が影響して、生産計画を下方修正するニュースが報道されています。
経済への影響が大きいことから度々ニュースになっているのですが、住宅建設においても「ウッドショック」が影響して、新築工事とともに納期の遅れがクローズアップされています。

ウッドショックとは、世界的な木材価格の高騰が引き金となって、国産材の需要の急増を引き起こしている現象で、ある調査によると、ウッドショックの影響で5割を超える新築工事が遅れているそうです。

木造の住宅建築の中にはアパートの新築もあるわけですから、工事の遅れ、建設工事の値上げ等への影響が懸念されているところです。
ただ、9月に入って木材の輸入量が回復し、一時の最高値から一転して上昇幅が鈍っているようです。

今までの上昇一方とはいかないまでも、これまでに現物を確保するために高値で契約した素材が流通し始めるため、末端価格の値動きに注意を払う必要があります。





「2020年度賃貸契約者動向調査(首都圏)」
契約の決め手となる条件に変化
「間取り」「面積<広さ>」が増加



コロナ禍に賃貸住宅の物件を探す顧客の気持ちや入居条件、設備等の入居に際しての要望を調査した結果がこのほど、(株)リクルートから発表されました。

賃貸物件を契約した人を対象に実施した2020年度(2020年4~2021年3月入居者)の「2020年度賃貸契約者動向調査(首都圏)」結果で、主な内容は次の通りです。

オンラインのみの内見実施者が13.5%、オフラインとの併用者が6.2%で、合わせると約2割がオンライン内見を利用しています。

オンラインでのみ内見を実施した人の見学物件数は3.2件と、オフラインでのみ内見を実施した人の2.9件と比べ0.3件多くなっています。
また、オンライン上で完結する賃貸契約の認知度が73.3%と、3年間で3割弱から7割以上まで大幅に増加しています。

ペット飼育者の平均賃料は非飼育者と比べ、
1万7,505円高い10万5,847円


契約の決め手となった項目では、「初期費用」「通勤・通学時間」が昨年と比較して5ポイント以上減少し、「間取り」は2ポイント以上増加。
やむを得ずあきらめた項目では「間取り」「最寄り駅からの時間」「設備・仕様」「生活利便性」が4ポイント以上減少しています。

リモートワーク実施者の「決め手となった項目」では、「面積<広さ>」がリモートワーク非実施者と比べて11.6ポイント多くなっています。

なお、ペット飼育者の物件を探し始めてから契約までの期間は、ペット非飼育者と比べ、平均8日多く、平均賃料は10万5,847円と、ペット非飼育者と比べて1万7,505円高くなりました。

ペット飼育者の「決め手となった項目」は、非飼育者として比較して、「設備・仕様」「路線・駅やエリア」「最寄り駅からの時間」が5ポイント以上少なくなっています。