2021年11月号エスト賃貸経営新聞の賃貸経営新聞 | 埼玉の不動産投資・収益物件・建物管理|株式会社エストハウジング

2021年11月号エスト賃貸経営新聞

新築物件が出回り 賃貸市場の競合状態は一段とシビアに
景気の先行きは持ち直しから緩やかに回復の気配


緊急事態宣言の解除により、飲食、観光、イベントなどに人々が徐々に戻って活気を見せつつあります。
景気も上向き、WITHコロナ時代を歩み始めようとしています。
賃貸住宅市場を取り巻くここ1ヵ月の主だった動向をまとめてみました。


最近のニュースで注目されるのは、「不動産取引における心理的瑕疵」に関する事案について、国土交通省から「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」が公表されたことです。
これによって仲介の幅が広まり、市場の広がりに期待が寄せられています。
2面に詳しく取り上げています。

さて、賃貸住宅が新設されるということは、時を経ず市場に出てきて先行する既存の賃貸住宅と競合状態となるので、手放しで歓迎されるものではないのですが、消費者を迎える市場の活性化につながります。

8月の貸家の新設着工が、前年同月比3.8%増の約2万9千戸で、6ヵ月連続の増加となりました。
民間資金による貸家が増加し、公的資金による貸家も増加したため、貸家全体で増加となったものです。
今年1~8月の合計でも、前年比3.2%増の21万戸を記録しています。

新設増は、やはり賃貸住宅投資の意欲が相当に強いことを物語っており、不動産投資における賃貸経営への意欲は、しばらく強まることはあっても減少することはないのではないのではないでしょうか。
今後、実需のニーズ以上の新築物件が出回ってくることから、市場の競合状態は一段とシビアになると予測されます。

足下の景気動向ですが、内閣府から発表された9月の景気ウォッチャーの見方は、「景気は新型コロナウイルス感染症の影響による厳しさは残るものの、持ち直しの動きがみられ、先行きについては、内外の感染症の動向を懸念しつつも、ワクチン接種の進展等によって持ち直しが続くとみている」としています。
2~3ヵ月先の景気の先行きに対しては、家計動向関連、企業動向関連、雇用関連のすべてのDIが上昇したことから、前月より12.9ポイント増と3ヵ月ぶりの上昇となっています。

9月の不動産DIは前月比3.2ポイント増

(株)帝国データバンクの9月調査の「TDB景気動向調査」でも、「国内景気は、新規感染者数の減少や株価上昇などが好材料となり、再び上向きに転じた。今後は、感染拡大による下振れリスクを抱えつつも、緩やかに回復していく」とし、業界別の不動産DIでは、前月比3.2ポイント増を示しています。

また、日本銀行が10月7日に開催の支店長会議に向けて収集した情報をもとに集約した、地域経済報告「さくらレポート」では、各地域の景気の総括判断として、「夏場の感染拡大や、供給制約に伴う一部の減産の影響から、『持ち直しの動きが一服している』などとする地域もみられるが、多くの地域では持ち直し方向の判断を維持している」と捉えています。

こうした調査報告から、緊急事態宣言の解除に加え、ワクチン効果の顕在化への期待感の高まりが伝わります。
まだ本格的な景気の反騰が見通せませんが、このままの上向きを期待したいところです。





賃貸住宅市場最新ニュース
マンション・アパート(一棟)の不動産価格指数が過去最高値


■国土交通省が発表した「不動産価格指数」(令和3年第2四半分・季節調整値)のマンション・アパート(一棟)は、前期比2.9%増の143.9と、平成22年の平均を100として、過去最高値となっています。

■総務省が公表した8月の住民基本台帳人口移動報告結果によりますと、8月の市区町村間(0.3%増)、都道府県間(0.4%増)、都道府県内(0.2%増)の移動者数が、前年同月に比べて増加しています。とくに外国人の移動者数の増加が目立ちます。

■商品や追加工事と交換できるポイントを付与する「グリーン住宅ポイント制度」のポイント発行の申請期限が、従来の10月31日から11月30日(窓口・郵送)と12月15日(オンライン)に延長されます。詳しくはグリーン住宅ポイント事務局に確認ください。

■不動産投資サイト「楽待」を運営する(株)ファーストロジックが10月13日に発表した、同サイトにおける「投資用不動産市場調査2021年7~8月期」の結果によりますと、「全物件種別で価格が下落したのは新型コロナウイルス感染拡大当初2020年1~3月期以来で、2020年4~6月期から上昇を続けていた区分マンション価格は前四半期マイナス77万円となり、6四半期ぶりに利回りが上昇」しました。また、「期間中の新規掲載物件数は全種別で増加しており、価格には一服感があるものの、引き続き売買は積極的であると考えられる」としています。





ニュースフラッシュ
「令和3年都道府県地価調査」の結果
住宅地は下落率が縮小し、商業地は下落率が拡大



「令和3年都道府県地価調査」の結果によりますと、全国の全用途平均は2年連続の下落となったが、下落率は縮小。
用途別では、住宅地は下落率が縮小し、商業地は下落率が拡大しました。

令和3年7月1日時点の1年間の地価動向として、全国約2万1,400地点を対象に実施された調査で、三大都市圏の住宅地は東京圏、名古屋圏で下落から上昇に転じ、大阪圏は下落率が縮小しました。
商業地は東京圏で上昇が縮小し、大阪圏は9年ぶりに下落に転じ、名古屋圏は下落から上昇に転じました。

一方、三大都市圏以外の地方圏における市区町村の全用途平均は、下落が継続しているが下落率が縮小し、用途別では、住宅地は下落率が縮小し、商業地は下落率が拡大しています。

このように全国の地価動向は、新型コロナウイルス感染症の影響等により下落が継続している中、住宅地は下落率が縮小し、商業地は下落率が拡大するなどの現象を見せました。





「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」公表
現時点の裁判例や取引実務に照らして策定


国土交通省は10月8日、「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」での議論を踏まえ、「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を公表しました。


円滑な流通や安心できる取引の阻害への対策

国土交通省が5月から6月にかけて実施した、「宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取り扱いに関するガイドライン」(案)のパブリックコメントを参考に修正した最終的な内容を、今回、取りまとめたものです。

取引の対象不動産において過去に生じた人の死に関する事案について、告知に係る判断基準がないため、取引現場の判断が難しく、円滑な流通や安心できる取引が阻害されていたことへの対策として、ガイドラインが策定されました。

まずガイドラインでは、宅地建物取引業者が媒介を行う場合、売主・貸主に対し、告知書等に過去に生じた事案についての記載を求めることにより、媒介活動に伴う通常の情報収集としての調査義務を果たしたもの、としています。

告知については、原則として、人の死に関する事案が、取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合には、これを告げなければならないとし、取引の対象不動産で発生した自然死・日常生活の中での転倒事故や誤嚥などの不慮の死については、原則として告げなくてもよい、としました。

また、賃貸借取引の対象不動産・日常生活において通常使用する必要がある集合住宅の共用部分で発生した自然死・日常生活の中での不慮の死以外の死が発生し、事案発生から概ね3年が経過した後は、やはり告知は原則として不要です。

借主の意向を十分把握し
慎重に対応すること


ただ、告げなくてもよいとした場合でも、人の死の発生から経過した期間や死因に関わらず、買主・借主から事案の有無について問われた場合や、事件性、周知性、社会に与えた影響等がとくに高い事案や取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合は、告げる必要があります。
告げる時、事案の発生時期(特殊清掃等が行われた場合は発覚時期)、場所、死因及び特殊清掃等が行われた場合はその旨を告げる必要があります。

なお、ガイドラインでは留意事項として、個々の不動産取引においては、買主・借主が納得して判断した上で取引が行われることが重要であり、トラブルの未然防止の観点から、取引に当たって、買主・借主の意向を事前に十分把握し、人の死に関する事案の存在を重要視することを認識した場合には、とくに慎重に対応することが望ましい、としています。

このようにガイドラインは、過去に人の死が生じた場合、宅地建物取引業者が宅地建物取引業法上負うべき義務の解釈について、現時点における裁判例や取引実務に照らして、一般的に妥当と考えられるものを整理し、取りまとめられています。





賃貸経営ワンポイントアドバイス
市場が活況を呈している時こそ「出口戦略」の好機
「資産を分散化」して収益の多様化に「組み替える」



市場が熟成している時がベスト

賃貸住宅の新設が相次いでいます。
全国集計で8月は前年同月比6ヵ月連続でプラスです。

金融機関のローン審査の厳しさもあって、今年2月の集計まで貸家の着工は、30ヵ月連続の減少を見せていたのが、3月に入って31ヵ月ぶりに増加して以来、直近の8月まで6ヵ月連続のプラスです。

ここへきて新設増が続いている背景にあるのは、賃貸経営が資産承継対策として評価される一方、家賃を中心とする収入が安定していることが積極的な賃貸投資を支えていることです。

そこで本題の「出口戦略」との関りですが、市場が活況を呈している時こそが出口戦略に着手する好機といえます。
市場の動きが活発な時は、売るにも買うにも市場の【勢い】に乗ることができるためです。

所有する物件を売却して現金を得、それを資金として高収益が見込まれる物件に「買い替え」たり、金融資産や不動産投信などに「資産を分散化」して、収益の多様化に「組み替える」には、市場が熟成している時がベストなのです。

物件の売却が有利に進めば、後の展開もアドバンテージが高まります。
その意味で、売却は出口戦略の成功を占う要といえます。
売却については物件の入居率が高く、その上入居者が入っている状態であれば容易で、また、現況で売却するほかに、更地にして売却したり、一部リフォームして物件の付加価値を高める方法などがあります。

売却が完了すれば、売却した現金を元に低い利率のローンを活用して、新たな収益が見込まれる不動産投資や高収益が期待される賃貸物件に組み替えます。
組み換えによってリスクを分散するものです。

なお、売却するにも新規購入にも税金や諸経費がかかってきますので、全体のプランをしっかり固めて、実務に携わる事業パートナーは慎重にお選び下さい。





ちょっと一服
引っ越しの動機は、やはり住居に関連する項目が上位に


(株)リクルートが発表した引越しに関するアンケート調査の「引越したいと思った瞬間ランキング」を見ていますと、引越しの動機は、やはり住居に関連する項目が上位に並んでいます。

ランキングされた1位から5位のうち、「住んでいる家に不具合が起こったとき」が2位、「隣人が苦手な人だったとき」が3位、「自分よりいい家に住んでいる友人の家に遊びに行った後」が5位と、3つが住居関連です。

ちなみに、1位は「入学・入社・転職などのライフイベントの節目」で、4位が「給料が下がったとき・上がったとき」となっています。

ところで、引越しに関して国土交通省では「引越時期の分散」をアピールしています。
3月から4月の土日にかけて引越しが集中しているため、引越時期の分散を利用者に呼びかけているものです。

引越時期の分散は引越しする当事者もメリットがあるのですが、我々仲介業務に携わる者も、余裕をもってお客様に応対することができますので、来春には引越時期の分散が進んでほしいものです。