2017年5月号エスト賃貸経営新聞の賃貸経営新聞 | 埼玉の不動産投資・収益物件・建物管理|株式会社エストハウジング

2017年5月号エスト賃貸経営新聞

「民法の改正案」が衆議院で可決今後は法律に沿って運用
「敷金」や「原状回復」の取り扱いに新ルール適用


明治29年以来初めて改正される「民法」の債権関係の法律、「民法の改正案」が衆議院で可決されました。
成立後、施行日は交付から3年以内ですが、契約ルールの抜本的な見直しとなる改正案によって、敷金や原状回復の取り扱いに新ルールが適用されます。

今回、改正の対象となっているのは、日常生活や経済活動に関する契約のルール。
明治29年に制定され、以来大幅な改正はされていません。
賃貸住宅に関しても、「敷金」「原状回復」について新ルールを定めています。

時代の変化に対応し、多様化する消費者ニーズに応えるのが狙いといえます。

それによりますと、賃借人の債務を担保する敷金について、「賃貸人は賃貸借が終了し、賃貸物の返還を受けたとき、または、賃借人が適法に賃借権を譲渡したときは、賃借人に対し、敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭債務を控除した残額を返還しなければならない」。
また、「賃貸人は、賃借人が金銭債務を履行しないときは、敷金を当該債務の弁済に充てることができる」とした規律を設けています。

一方、原状回復義務に対しては、「賃借人は、賃借物を受け取った後にはこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く)がある場合、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由のときは、この限りではない」としています。

要は、敷金は「賃貸借契約が終了したとき、賃料の不払いがない場合、借主に返還しなければならない」と明文化、ルール化されるものです。
原状回復についても「通常の使用による損耗、経年変化の損傷を除く」と明記されています。

現行民法を改正して、基本的なルールの明文化を図る

現行では、敷金を原状回復費用に充てて、修理代金を差し引いて返却する「敷金特約契約」が多いのですが、改正法では、貸主は借主に契約終了時に敷金を返却するように義務づけています。

話し合いや国土交通省、東京都の「トラブル防止ガイドライン」を参照して解決してきたことを法律でルール化して、「賃貸契約をめぐるトラブルとガイドライン」がこれまでは参考レベルであったのが、判断のベースになるようです。

従来、不動産の取引き、賃貸借契約には宅地建物取引業法を中心に、借地借家法、消費者契約法、民法等の運用によって行われてきたのを、現行民法を改正して基本的なルールの明文化を図ろうとするものです。

こうした新ルールが打ち出されたことで、今後は法律に沿って運用することが厳格に求められ、賃貸経営のスタンスにもやや工夫が必要となりそうです。




個性化進む「シェアハウス」
徹底して入居者ニーズを絞り込む
継続性が長期の経営安定に貢献



多様な賃貸住宅が各地で建設されています。
個性豊かな賃貸住宅としてシェアハウスが定着した感があります。
ターゲットを思い切り絞り込んで、入居者といえばまるで同好者の集まりのようです。
そこでここ1ヵ月ほどの間に新設されたシェアハウスの中から、何かの参考になるかと目を引いた事例を紹介します。

東京・北区に完成したのは女性専用シェアハウス。
築45年以上経つ戸建をシェアハウスに改築したもので、壁や階段などもとの建物の名残りをとどめつつ、設備を新しくして、。リビングや個室の窓から季節の植栽が望め、味わい深い物件となっています。

東京・練馬区にオープンしたのは国際交流シェアハウス。
フランス語と英語上達のためのシェアハウスで、フランス語、英語を上達させたい人が対象者となっています。
世界各国からの留学生をサポートする留学エージェント企業と提携し、日常的に語学トレーニングができる留学と同等の環境を提供する、としています。

世界的にも珍しい「猫専用賃貸」

東京・葛飾区にオープンした「猫専用賃貸」は世界的にも珍しい猫専用デザイナーズ・アパートメント。
全7戸の部屋には、猫と人が快適に暮らせる仕組みが施され、猫が3次元に動けるようキャットウォークやロフトの設置、安心して猫をバルコニーに出せる設計や猫トイレの置場にも配慮されています。
横浜・青葉区にオープンしたトライアスロン×シェアハウスもユニークです。
DJの音楽に合わせてバイクのトレーニングができるスピニングマシンや、世界中のアスリートたちとリアルタイムで競争できる体感型オンラインサイクリングシステムを完備した新スタイルのシェアハウスです。




ニュースフラッシュ
地価公示が全用途平均で2年連続の上昇
背景にはインバウンド需要が要因に



土地価格が落ち着きを見せています。
景気の好環境や大都市圏における再開発事業の推進等が影響したものです。

平成28年1月以降の1年間の地価(29年地価公示結果)について、国土交通省から発表されたが、全国平均で全用途平均は2年連続の上昇となりました。
用途別では、住宅地は昨年の下落から横ばいに転じ、商業地は2年連続の上昇となり、上昇基調を強めています。
三大都市圏を見ると、住宅地は大阪圏が昨年の上昇から横ばいとなった以外、ほぼ前年並みの小さな上昇を示しています。
商業地は名古屋圏を除き上昇基調を強め、工業地は総じて上昇基調を継続しています。

また地方圏を見ると、札幌、仙台、広島、福岡の地方4市では総じての用途で三大都市圏を上回る上昇を示し、地方圏のその他の地域においても総じての用途で下落幅が縮小しています。

背景には、経済事情に加え、高まるインバウンド需要が雇用人員の人で不足や仕入れ価格の上昇を招き、地価上昇を促していることが挙げられます。




全国の賃貸住宅市場新設の現状を見る
対応を間違うと経営に大きな影響が


賃貸経営が相続税対策の枠を超えて人気を呼び、全国的に新設が増加の一途です。
日本銀行が3ヵ月に一度発行する「さくらレポート」を通して、各地の賃貸市場の実態を見ていきます。

昨年1年間に新設された賃貸住宅は、前年比10.5%増の約42万戸で、5年連続の増加です。
平成19年以降、過去8年間で最も多い着工数となっています。
また直近の2月の貸家の新設着工は、前年同月比6.8%増で、16ヵ月連続の増加。
28年4月~29年2月の28年度合計は、前年度比11.4%増の39万3338戸と高い新設を見せています。

日本銀行が4月に開催した支店長会議に向けて収集した情報をもとに、公表された地域経済報告の「さくらレポート」4月分を見ると、各地域における住宅投資の動向とともに、貸家市場の実態がよく表れています。

「不動産価格が上昇しているものの、首都圏に比べればなお高めの利回りが得られることから、アパートの建築が増加している」(札幌・釧路)。
「貸家は、相続税対策を目的とする着工案件が引き続き好調」(金沢)。
「貸家は、土地所有者の資産活用・節税ニーズを受け、着工は高水準が続いているが、足もとの受注には減速感が見られつつある」(甲府・横浜)。
「貸家では、相続税対策を企図した地主層の需要が底堅いほか、耐震性強化のための建て替え需要も高まっている」(名古屋)。
「貸家の着工は、低金利が続く中、相続税対策や資産形成ニーズを受けて、総じて堅調に推移しているものの、地主や投資家の供給過剰への懸念が強まっている」(大阪)。
「相続税対策を意識している富裕層は、節税目的が主で目先の需給はバランスを意識することが少ないため、貸家の受注状況にはさほど変化はない」(広島・松江)。

相続税対策だけでなく低金利、資産管理、土地活用が影響

こうした各地の動向を見ると、相続税改正に伴う対策で賃貸住宅を建てるといった理由だけではなく、低金利、資産管理、土地拡張の側面が強く影響しているのがよく分かります。

ただ、賃貸住宅の建設・購入に係る融資(アパートローン)実績で、平成27年度の賃貸住宅向け新規貸出額が3兆6653億円、そして27年度末の賃貸住宅向けの貸出残高は27兆2498億円で、これだけの資金が投じられた賃貸住宅が市場に出てくるわけですから、対応を間違うと経営に大きな影響を受けることになりかねません。




賃貸経営ワンポイントアドバイス
万一に備え、認知症や相続税対策を検討する
「成年後見制度」と「家族信託」が静かな広がり



運用には専門家に依頼する

賃貸経営は数十年に及びます。
年月の経過とともに起こる体の衰え、あるいは認知症の対策を元気なうちに講じておくことは、もはや特別なことではなくなってきました。
万一に備えて、「遺言書」を書きとめることはそうそう気分よくできるものではないのですが、それでも後々のことを考えると必要なようです。

日本国民の4人に1人が65歳以上を占める高齢社会を迎え、遺言書の役割の認知や相続税に対する措置が徐々に広まっています。

そして遺言書とともに、認知症発症後の相続対策となる「成年後見制度」と「家族信託」が静かな広がりを見せています。

成年後見制度とは、「認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々は、不動産や預貯金などの財産を管理したり、身の回りの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり、遺産分割の協議をしたりする必要があっても、自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。このような判断能力の不十分な方々を保護し、支援する制度です」(法務省)。
遺言書と組み合わせて活用するためにも専門性が高い分、弁護士や司法書士の専門家に依頼することが必要です。

一方、「家族信託」は『財産管理の一手法』で、信頼できる家族・親族を受託者として財産管理を任せる仕組みです。
平成19年に信託法が改正されて以来、相続や認知症対策としての利用が進んでいます。

家族信託はまだ広く知られていませんが、認知症発症後の相続対策や空き家対策の取組みとして注目を集めています。

賃貸経営の規模が大きくなり、売上や借入が増えて決算も煩雑になっているところへ、オーナー様の高齢が進み、財産管理に支障が生じる恐れがあるようでしたら、万一に備えて事前に、対策をとっておくことも必要ではないかと思います。




ちょっと一服
プラスアルファの要望とリーズナブルな要求が定着


『夏も近づく八十八夜、野にも山にも若葉が茂る』。
かつて文部省唱歌として親しまれてきましたが、歌の通り霜の心配もなくなって、野に山に一斉に若葉の芽が吹きだす五月を迎えます。

暑くも寒くもない気持ちのいい気候が続き、随分と癒されます。
一年中こんな気候が続くとどれだけ体も気分も爽快なことかと思います。

それでも何だかんだいっても1年の半分近くとなりました。
春の賃貸ビジネスの繁忙期もほぼ終わりを迎えますが、まだゴールデンウィーク明けにもお部屋をお探しのお客様は数多くおられますので、今しばらく気を緩めることなく対応して参りたいと考えております。

求人数や景気動向など、公表されている景気調査結果が好調なように、来店するお客様もやや余裕があるようです。
ここ10年で市場は様変わりして、さらにいいものを値ごろ感あるリーズナブルな価格で求める空気がすっかり定着した感を強くしています。




2017年推計の「日本の将来推計人口」
48年先、2065年の人口予測を上方修正
人口減少速度や高齢化進行が緩和



少子高齢化がすっかり定着した感を強めていますが、これから48年先の人口予測が少し修正されました。
人口減少の大きなながれに変わりはないようですが、上方修正をされていくらかホッとした感じを受けます。

厚生労働省の国立社会保障・人口調査の各定数が公表されたことを受けて、2017年推計の「日本の将来推計人口」を発表しました。
5年に一度の新しい見通しで、2015年までの実績値をもとにして、48年先の2065年までの人口について見積もったものです。

それによりますと、総人口は2015年の国勢調査による1億2709万人から2065年には8808万人、老年人口割合(高齢化率)は、2015年の26.6%から2065年には38.4%へと上昇しています。

前回推計と比較すると、総人口は8135万人が8808万人、総人口が1億人を下回る時期は2048年から2053年に、老年人口割合が40.4%から38.4%と、人口減少の速度や高齢化の進行度合いが緩和しています。
高齢者数のピークは2042年と前回と同じで、高齢者数は3878万人から、3935万人へと増加しています。

人口減少がこのまま続くと
外国人流入に拍車がかかると予測


推計の前提となる合計特殊出生率は、近年の30~40歳代の出生率実績上昇等を受け、前回の2060年推計の1.35から1.44(2065年)に上昇。
また平均寿命は、2015年の男性80.75年、女性86.98年から、2065年に男性84.95年、女性91.35年に伸長となっています。

わが国の現状は、人口が減少することから人手不足が各界に広がり、経済活動に影響を及ぼしていることが挙げられています。
賃貸経営も全く同様で、成人人口の減少は市場規模の縮小につながりかねません。
それとまだ先のことですが、人口減がこのまま続くと、ある時期から外国人流入に拍車がかかると予測されます。
賃貸顧客も一機に多様化するのではないでしょうか。




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