2017年7月号エスト賃貸経営新聞の賃貸経営新聞 | 埼玉の不動産投資・収益物件・建物管理|株式会社エストハウジング

2017年7月号エスト賃貸経営新聞

賃貸住宅市場と不動産市場をめぐる最近のトピックス
訪日観光客などの需要を背景に堅調な投資状況


明治29年依頼といわれる「民法の改正案」や「民泊新法」が国会で可決されるなど、賃貸住宅を取り巻く環境にも様々な変化が生じています。
そこで、賃貸住宅市場と不動産市場をめぐる最近のトピックス、動向を取り上げてみました。

まず、土地と不動産全般の動きですが、全国主要都市の地価動向を調査した「地価LOOKレポート」の平成29年第1四半期(1月1日~4月1日)が国土交通省から発表されました。

それによりますと、全体として緩やかな上昇基調が継続。
三大都市圏に加え、地方都市の札幌、仙台、金沢、福岡でも比較的高く上昇し、地価動向は、上昇が85地区、横ばいが15地区、下落が0地区となって、上昇地区が前回と同じく全体の約8割となっています。

上昇地区の割合が高水準を維持している主な要因は、空室率の低下等オフィス、店舗、ホテル等に対する投資が堅調に推移したことが挙げられます。

ところで、(株)帝国データバンクの5月調査の「TDB景気動向調査(全国)」結果によりましと、5月の景気DIは前月から横ばいの46.5で、ここのところ続いていた景気回復が一服したようです。

その中にあって、不動産は前月比1ポイント増。
2ヵ月連続で改善し、消費税率引上げの直前だった平成26年3月以来3年ヵ月ぶりに50台を回復しました。
とくに賃貸用物件の販売が好調に推移する中で、「競争力のある地域・物件を中心に堅調に推移」という声も聞かれるなど、貸家業の景況感は3ヵ月ぶりの改善に転じています。
また、不動産の景況感の「先行き」についても「業績順調のため、落ち込む気配はない」(貸家)と明るい見通し。

空室率、成約数では悪化傾向を見せる

一方、賃貸住宅市場の動きを分析している不動産評価Webサイト「TAS-MAP」を運営する(株)タスは、「賃貸住宅市場レポート首都圏・関西圏・中京圏・福岡県版」の最新号で、3月期の首都圏・1都3県のマンション系空室率は全地域で悪化傾向となり、兵庫県、愛知県、静岡県でマンション系が悪化傾向、アパート系の空室率は、大阪府が改善傾向、それ以外の地域は悪化傾向で推移している、と捉えています。

また、不動産情報サービスのアットホーム(株)の全国不動産情報ネットワークにおける首都圏・4月期の居住用賃貸物件成約数は1万9461件で、前年同月比5.9%減少し14ヵ月連続のマイナスとなりました。

以上、直近の賃貸住宅を取り巻く市場動向の概況をまとめてみました。




「民泊新法案」
本格的な運用に弾みがかかる中
問題個所を残しながらの船出



民泊新法案といわれる「住宅民泊事業法案」が6月9日に参議院本会議において可決、成立され、賃貸住宅の空き部屋を有効活用できると、期待感がやや先行した「民泊」の本格的な運用に弾みがつきそうです。

東京オリンピック開催までに訪日客4千万人の目標が立てられていることもあって、民泊サービスの普及に期待が寄せられ、すでに関連するビジネスが様々な分野で動き出しています。
人気が高く、需要があることから参画する企業も多く、問題個所を残しながらの船出となっているようです。
とくに外国人を対象とする宿泊ビジネスだけに、管理、メンテナンス等において調整が難しそうです。

平成25年12月に、東京、大阪、京都、福岡の「国家戦略特別区域」で、旅館業法を緩和して個人宅や賃貸住宅を宿泊施設などに活用する民泊が動き出しましたが、民泊が全国で解禁される民泊新法案は、住宅宿泊事業に係る届出制度の創設のほか、住宅宿泊管理業、住宅宿泊仲介業それぞれに係る登録制度が創設されます。

すでに賃貸ビジネスの他分野で様々な動き

主な内容は
①住宅宿泊事業を営もうとする場合、都道府県知事への届出が必要
②地域の実情を反映する仕組みを導入
③年間の営業日数の上限は180日
④仲介業者は観光長官への登録が必要
⑤住宅宿泊管理業を営もうとする場合、国土交通大臣の登録が必要
⑥無許可営業に対する罰金として上限100万円が課される
というもの。

早くから賃貸ビジネスの各分野で様々な動きが見られ、民泊物件に特化したサービスや民泊事業サポートするビジネスの相次ぐ参入が続いていますが、まだ試行錯誤の状態といった部分もあって、今後に多くの課題を残しています。




ニュースフラッシュ
本格的に始動に入る「民法の改正」
敷金や原状回復に新ルールが適用



「民法の改正案」が衆議院に続いて参議院で可決され、およそ120年ぶりに債権部分など200の項目が見直されます。
契約ルールの抜本的な見直しとなる改正法案によって、敷金や原状回復の取り扱いに新ルールが適用されます。

公布後、3年以内の施行となりますが、今後施行に向け民法改正に対応した賃貸借契約書や重要事項説明、契約関連の整備が必要とされています。

今回の改正によって、賃貸住宅に関しても敷金、原状回復について新しいルールを定めています。
敷金は「賃貸借契約が終了したとき、賃料の不払いがない場合、借主に返還しなければならない」と明文化、ルール化されるものです。
かつて、担保としての預かり金であったのが、法律によってその内容が明確にされます。
原状回復についても「通常の使用による損耗、経年変化の損傷を除く」と明記されています。

今後は法律に沿って運用することが厳格に求められ、賃貸経営のスタンスにも、やや工夫が必要となりそうです。




賃貸住宅経営を取り巻く「二極化現象」
市場と経営サイド両面に見られる傾向


経済の二極化がよく話題に上がります。
最近では、『富裕層と貧困層による格差』が社会問題といった捉え方がされています。
そこで、今日の賃貸住宅経営を取り巻く二極化について考えてみます。

二極化とは、ある事例に対して左右両極端な現象が生じることを指します。
その最もたる例が、財布の紐を締める消費者をはた目に、高級品が売れている事実です。
これなどははっきりしている事例で、経済的に余裕のある層が、消費に対して鷹揚であることから、欲しいものは値段に左右されることなく購入する、といったパターンです。

それでは賃貸経営における二極化とは何か、ですが、経営側と消費者(入居者)動向両面にある変化が進んでいる事実を指します。
その一つが、予算に縛られることなく、良いもの、欲しいものは納得して決めるという市場における二極化の傾向が年々強くなっています。

例えば、家賃が高くでも間取りと収納スペースに余裕がほしい、そして、セキュリティーシステムは外せない。
設備においても、インターネット・高速通信、エアコン付き、ピッキング対策の鍵、追い焚き機能付きの風呂は絶対必要という風に。
中には上下階の床等の遮音、防音、さらには結露対策に優れていることが条件、といったハイレベルな要望もあります。

年々強くなる二極化の動き

そうした半面、家賃はできるだけ安く、その代わり設備関連はぜたくを言わない、といったお客様もおられます。
要は、欲しいものはそれだけの価格で求める。
対して内容については安価に、価格優先で決めたい、といった二つの傾向がはっきりしています。
この傾向は年々強くなり、ここ数年の景気浮揚によってより明確となっています。

一方、「賃貸住宅経営の二極化」については、この10年来取り上げられていますが、ここへきてより鮮明に格差の傾斜を見せています。
不動産の場合、立地・環境等、人気のスポットによって、賃料差が生じ、集客力のある住宅地や高度な都市機能が集積した地域では賃料の高値が定着しています。

このように賃貸経営における二極化とは、賃貸経営者の経営方針、物件の立地条件、建物の規模・構造、管理の内容とによって、経営の実態がガラッと違い、こうした要素が複雑に絡んで経営レベルでの二極化現象が起きているものです。




賃貸経営ワンポイントアドバイス
賃貸市場のメインは新築~築20年もの
建て替えに恵まれた今、新築も視野に



18ヵ月連続の新築の増加

賃貸住宅の新築が全国的に続いています。
4月は前年同月比約2%増、18カ月連続の増加です。
また、今年1~4月の4ヵ月間では、前年比約8%増の約13万戸とハイテンポの実績を見せています。

ところで、現在の賃貸住宅の建築時期・築年数とその割合は、国土交通省のデータによると、平成17年~26年が約22%と最も多く、平成27年以降が約20%、平成7~16年が約19%、昭和60~平成6年が約20%となっています。
平均築年数は約17.2年。

ということは、新築~築10年ものが市場の約42%、そして築20年もので全体の約6割を占めていることになります。
このような市場に流通する物件の築年数と割合は、賃貸住宅市場の健全性を物語っています。
築20年ものをベースに、新築~10年もの、あるいは30~40年もので市場が構成され、多様なニーズに応えているのではないでしょうか。
ただ、住居をお探しのお客様がやはり新築を好まれる傾向が強く、市場での競争は新築がどうしても有利になります。

そこで築30年、40年を経過して空室がどうしても埋まらない、建物の傷みが部分的な補修やリフォームのレベルでは対応できないといった場合、思い切って建て直すのも経営再建の切り札になると思われます。

今日、新築、建て替えが活発なのは、とにかく金利がかつてなく低いことに加えて、賃貸住宅の設備、機能が20~30年前と比べて格段に向上していることから、入居者の人気が高く、優先的に選ばれていることが背景にあります。

物件が古くなって、入居者募集にも支障を来している場合、立地・環境、手持ち資金、新商品(賃貸住宅)の内容等を十二分に考慮して建て替えも視野に入れて検討されてはいかがでしょうか。
丸々新規に賃貸経営を始めるのではなく、これまでのつながりも経験もあるため、有利に経営がスタートできます。




ちょっと一服
メリットがあるのに依然本格的な利用に至らない「定期借家契約」


数々のメリットを持つ定期借家契約の積極的な活用の広がりに期待が集まっています。
しかし利用状況を見ると、不動産情報サービスのアットホームから発表された、平成28年度1年間の首都圏における居住用賃貸の「定期借家物件」の成約状況では、定期借家の成約数は前年度比2年連続の減少となっています。

居住用賃貸物件に占める定期借家の割合は一戸建てが最も高く、成約物件における種目別割合ではマンションが最も多くなっています。
なお、定借物件の成約数が最も多い賃料帯は「5万~10万円未満」で、一戸建ては「10万~15万円未満」が最多。

定期借家制度が発足して18年目を迎えますが、国の制度に関する調査でも、普通借家契約に利用が全体の約96%を占め、利用者が知らないという声も多く、依然本格的な利用に至っていないようです。

これから夏本番です。
梅雨の始まりがはっきりしなかったのですが、その分後半にかけて暑くなりそうです。
熱中症にはくれぐれもお気を付けください。




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