2017年10月号エスト賃貸経営新聞の賃貸経営新聞 | 埼玉の不動産投資・収益物件・建物管理|株式会社エストハウジング

2017年10月号エスト賃貸経営新聞

賃貸市場を囲む経済トレンド・不動産情勢の最新動向
景況判断指数がプラスの中、投資意欲旺盛な不動産


今年も残り3ヵ月となりました。
底堅い景況感の中、賃貸住宅市場においても堅調な安定感を見せています。
賃貸市場を囲む経済トレンドや不動産情勢など、最新のトピックスを各機関から公表された「調査レポート」から見ていきます。

現況の景気動向と今後の見通しについて、次の3つの調査レポートが歯切れよく解説しています。
まず、内閣府が9月に公表した「景気ウォッチャー調査」によると、8月の現状判断DIは、前月に対し横ばいの49.7。
2~3ヵ月先の景気の先行きに対する判断DIは、51.1。
景気ウォッチャーの見方は、「持ち直しが続いている。先行きについては、人手不足や海外情勢に対する懸念もある一方、引き続き受注、設備投資等への期待がみられる」としています。

また、財務省と内閣府が9月13日に発表した7~9月期の法人企業景気予測調査では、大企業の景況感を示す景況判断指数は2四半期ぶりにプラスに転じ5.1。
先行きの景況判断を全産業で見ると、大企業、中堅企業は「上昇」超で推移し、中小企業は「上昇」超に転じた後、「下降」超となる見通しです。

一方、帝国データバンクの8月調査の「TDB景気動向調査(全国)」結果によると、8月の景気DIは前月比0.1ポイント増の47.7となり、3ヵ月連続で改善。
今後の国内景気は、堅調な外需に加え、設備投資や個人消費といった内需関連の拡大が期待されることから、回復傾向が続くと見込まれる、としています。

この中で、不動産の景況感の「先行き」については、「建設業界の発注は五輪まで右肩上がりとの見方が多い」(不動産代理業・仲介)、「金利動向や地政学的リスクなどで不透明」(建物売買)、「供給過多、建築費高騰」(建物売買)と捉えています。

賃貸住宅の新設は2ヵ月連続の減少

ところで、ここ2年近く続いた賃貸住宅の新設傾向も曲がり角を迎えたようです。
国土交通省が発表した直近7月の新設住宅着工戸数によると、貸家の新設着工は、前年同月比3.7%減で、2ヵ月連続の減少。
公的資金による貸家は増加したが、民間資金による貸家が減少したため、貸家全体で減少となった。
人口流入が続く東京都内においても7月の貸家新設は、前年同月比3.4%減で、4ヵ月連続の減少となっています。

こうした折り、不動産評価Webサイト「TAS-MAP」を運営するタスが発表した、「賃貸住宅市場レポート 首都圏版・関西圏・中京圏・福岡県版2017年8月」で、首都圏では、19~30%の賃貸住宅が「経営難等物件データ」になっている可能性があることが推定される、としています。
また、2025年以降は首都圏においても世帯数の減少が始まるので、「経営難等物件データ」が増加することが考えられます。
今後は、いかにテナントを長期定着させるかが、賃貸住宅安定経営の鍵になる、と見ています。




賃貸取引きに係わる「IT重説」の本格運用が開始
PCやテレビを利用して重要事項説明


この10月1日より賃貸取引きに係わる「IT重説」の本格運用が開始されます。
重要事項の説明に、パソコンやテレビ会議などのITを活用する方法ですが、概略をご案内します。

「IT重説」とは、宅建業法第35条に基づき宅地建物取引士が行う重要事項説明をテレビ会議等のITを活用して行うもので、パソコンやテレビ等の端末を利用して、対面と同様に説明・質疑応答が行える双方向性のある環境が必要となります。

テレビ会議等のITを活用するに当たっては、一定の要件を満たしている場合に限り、対面による重要事項の説明と同様に取り扱われます。
国道交通省は早くから賃貸取引きに際してITを活用する是非を検討してきました。
すでにインターネット等を利用した社会実験を行い、問題点を整備して、今回、実用に踏み切ったものです。

「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」において、対面で行う重要事項説明と同様に取り扱うものと規定され、IT重説を行えるのは、賃貸契約に関する取引きに限定されています。

4点の主なメリット

IT重説の主なメリットとして同省では、次の4点を取り上げています。
①遠隔地の顧客の移動や費用等の負担軽減
②重説実施の日程調整の幅の拡大
③顧客がリラックスした環境下での重説実施
④来店困難な場合でも本人への説明が可能

例えば、子息が遠方に就学するため、大学の近くで部屋を探した後に、地元に戻った両親が契約者として重要事項説明を受ける場合、遠方の宅建業者を再度訪問することは、移動にかかる時間や交通費の負担が大きいのが、時間コストや費用コストを軽減することが可能としています。

同省では運用に際し、円滑、適正にIT重説を実施するために、IT重説に係わる遵守すべき事項、留意すべき事項、具体的な手順、工夫事例の紹介等のマニュアル「賃貸取引に係わるITを活用した重要事項説明実施マニュアル」を作成しています。

なお、お客様からIT重説を求められた場合でも、宅建業者自らのIT環境や案件の特性を踏まえて、宅建業者はIT重説の実施の可否について判断をすることができます。
また、貸主等の同意の取得や顧客のIT環境の確認ができない場合には、顧客が求めていてもIT重説は実施できません。




賃貸経営ワンポイントアドバイス
インパクトがある「フリーレント」の是非
ケースバイケースで効果的な運用を図る



入居者募集の一手法として定着

当初の家賃の1~2か月分をサービス、つまり無料とするフリーレントが登場した時、なになに~と思ったものですが、今ではすっかり入居者募集の一手法として定着しています。

またたく間に全国に広がり、1~2ヵ月どころか4ヵ月とか半年分の家賃をサービスするという事例も見られます。
本来、入金されるべき家賃をサービスするのですから、釈然としないものがあるのですが、契約の決定打となるケースが多いことから、ここ数年の間に全国的な広がりを見せたものです。

確かに実にストレートで、分かりやすいやり方です。
2年契約で約24回分の支払いの内、2回分サービスするというのですからインパクトはあります。

お客様が物件を決めかねて迷っている時に、フリーレントを提供すれば契約の背中を押す大きな条件になります。
空室が続いていた物件ならこのタイミングを逃すと、またしばらくは空いた状態が続きかねないと思われるとき、有効なようです。

仲介現場からしますと、ケースバイケースの運用を採ればいいのではないかと思います。
入居者募集の当初から、条件にフリーレントを打ち出すのも方法ですが、あくまでも最後の契約決定の切り札として使うというやり方で、臨機応変の活用です。

お客様が来店され、最初に入居希望の条件などを聞いている段階で、このお客様にフリーレントを提案すれば話が一気に進むという空気は察せられますので、頭からフリーレントを出すのではなく、ケースバイケースでの対応が効果的かと考えます。

そのためにも、オーナー様から、フリーレント使用もOKのご了承を事前にいただいておりますと、こうした柔軟な取り計らいが可能となります。
『損して得取れ』ということがいわれますが、フリーレントも一時の損を呑み込んで、長い目で見れば得をするともいえそうです。




ちょっと一服
「秋の賃貸商談」本格化を前に空室物件の整備をお願いします


賃貸住宅の新設にややブレーキがかかり始めたようです。
単月の統計ですが、国土交通省が公表した7月の新設住宅着工戸数によると、貸家の新設着工が6月に続いて前年同月比減となっています。
これで2ヵ月連続の減少です。
東京だけで見ると4ヵ月連続の減少傾向を見せています。

ただ基本的には、賃貸住宅経営に対する投資意欲は衰えていませんので、一服感の調整局面との捉え方が濃厚です。
その証拠に、今年の1~7月の新設着工の合計では、昨年比3.3%増となっています。

秋が深まりつつあります。
これから11月いっぱい、例年通り「秋の賃貸商談」で、お客様の来店も増えて賑わいます。
春のシーズン同様にオーナー様におかれましては、空室物件の清掃など準備を整えておいてください。
また、空室確認など急な連絡をさせていただくこともありますのでよろしくお願いいたします。

この秋を過ぎますと来年春まで、契約決定のチャンスが遠のいてしまうことにもなりかねませんので、私どもも気合を込めて取り組んで参る所存です。




新しい「住宅セーフティネット法」の実用化
住宅の確保にとくに配慮を要する人達の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度


「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律の一部を改正する法律」がこの10月25日に施行されます。
新しい「住宅セーフティネット法」の実用化に向けて動き始めました。
新法案の運用が本格的に稼働すれば、賃貸住宅の新しいマーケットが見込まれると、期待が寄せられています。

この新しい住宅セーフティネット法は、高齢者、低額所得者、子育て世帯、障害者、被災者などの住宅の確保にとくに配慮を要する人達(住宅確保要配慮者)の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度を創設して、住宅セーフティネット機能の強化を図るというものです。

また、人口減少が続く中で、公営住宅の増加が見込めないことや空き家、空き室を活用する方法として期待されています。

「入居拒否をしない」住宅ネット機能の強化を図ろうとするのが新法案の狙い

国土交通省のデータによりますと、貸主の入居拒否感が強いのは、単身の高齢者、生活保護受給者、高齢者のみの世帯、一人親世帯とされてます。
例えば単身高齢者について今後10年間で100万世帯の増加が見込まれ、このうち賃貸住宅入居者は22万人と見られています。

また、若年層の収入はピーク時から1割減少し、一人親世帯の収入は夫婦子世帯の43%など、家賃滞納、孤独死、子どもの事故、騒音等のトラブルを案じて入居拒否する傾向があります。
そうしたことから、不安なく暮らせる住宅の確保を可能とする住宅セーフティネット機能の強化が重要な政策課題となっています。

そのために空き家等活用して、住宅ネット機能の強化を図ろうとするのが新法案の狙いです。
新制度は、空き家の所有者が物件を都道府県等に登録し、各自治体が物件情報を提供する仕組みです。




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