2020年6月号エスト賃貸経営新聞の賃貸経営新聞 | 埼玉の不動産投資・収益物件・建物管理|株式会社エストハウジング

2020年6月号エスト賃貸経営新聞

緊急事態宣言の全面解除で、新たな社会活動が動き始める
コロナ禍の救済では家賃対策が前面に打ち出される


新型コロナウイルスの感染拡大に伴い政府から発令されていました緊急事態宣言が5月25日に、全国で全面的に解除され、手探りの中、新たな社会活動が動き始めました。
賃貸住宅市場を取り巻く経済事情を中心にまとめてみました。


しばらくは綱渡りのような経済活動が始まりますが、景気の指標となっている内閣府が公表する「景気ウォッチャー調査」(4月)の最新結果は、4月の現状判断DIが前月差6.3ポイント低下の7.9で、3ヵ月連続の低下となりました。
景気ウォッチャーの見方は、「新型コロナウィルス感染症の影響により、極めて厳しい状況にある中で、さらに悪化している。先行きについては、厳しさが増すとみている」とまとめています。

一方、帝国データバンクが5月8日に発表した4月調査結果の「TDB景気動向調査(全国)」によりますと、「4月の景気DIは前月比6.7ポイント減の25.8となり7ヵ月連続で悪化、前月に続いて過去最大の下落幅を更新した。新型コロナウイルスの影響が全国に及び、2ヵ月連続で全10地域47都道府県が悪化、24都府県で過去最低を更新した。外出自粛による地域内外への移動制限や面談抑制に加えて、休業要請への対応など、地域経済の活動が停滞した」と捉えています。

ところで、新型コロナウイルス感染拡大対策の令和2年度第2次補正予算案の審議が進んでいますが、追加経済対策として、困窮する学生の支援や事業者の支援が救済策の柱となっています。
その内容は家賃の救済をメインとしており、コロナ禍で困った人の救済は常に家賃対策が前面に打ち出されています。

家賃の公的支援として活用されているのが「住居確保給付金」で、各地の自治体で申し込みが相次いでいます。
支給対象の年齢など要件の緩和や運用の改善が奏功して広まったようです。

Web接客と対面接客のバランスを取りながらのご案内

4月7日に緊急事態宣言が発令されたことを受け、テレワークが一気に広がりを見せました。
賃貸市場ではこの数年間にインターネット、スマホのソーシャルネットワークサービスが随分普及しましたが、非対面ニーズの高まりとともに今後、ソーシャルネットワークサービスがさらに伸びるとみられます。

国土交通省においても新型コロナウイルス感染症対策のため、暫定的な措置として建築士法に基づく重要事項説明について、テレビ会議のITを活用した「IT重説」を可能としました。

ただ、賃貸物件を探す多くのお客様は店頭の窓口で、営業マンと対面して物件を詳細に吟味し、納得した上で契約を結んできた流れがあり、しばらくはインターネット、スマホ、VRゴーグルを装着したWeb接客と対面接客のバランスを取りながらのご案内になるかと思われます。


新型コロナウイルス感染症に伴う賃貸住宅経営の課題
国の方針は5月末までに新型コロナウイルス感染症を収束させるのが目標。
〇生活困窮賃貸入居者への対応
〇「ソーシャルネットワークサービス」のさらなる応用が進む
〇「新しい生活様式」との取り組み
〇家賃減額要請・遅延・滞納等の対応
〇貸し主向け支援策の確認




「新型コロナウイルス感染症に対する調査」
7割が住み替え、建て替えを様子見傾向
導入が進む非対面での営業接触、商談



新型コロナウイルスの感染拡大に伴い影響を受ける不動産、賃貸業界に関連した調査結果の一部を紹介します。

■「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」(帝国データバンク)
新型コロナウイルス感染症による自社の業績への影響、『マイナスの影響がある』と見込む企業は88.8%。
内訳をみると、「既にマイナスの影響がある」が56.9%、「今後マイナスの影響がある」が31.8%。

■「家賃3分の2補助に関する意識調査」(Wizleap)
コロナ禍の中、家賃を滞納されているか:滞納していると答えた方は3.2%で、滞納されていない方が65.8%。
今後滞納する可能性が高いと答えた方は28.3%。

■「新型コロナウイルス感染症の影響による生活者の住み替え行動に関する調査」(ライフル)
住み替え、建て替えを検討する生活者はコロナ前と比較して微増、検討行動は停滞。
7割が住み替え、建て替えを「どうしたらいいかわからない」「延期」と様子見傾向。
住み替え、建て替え中止は6.7%程度でその理由の大半は新型コロナがきっかけ。
新型コロナの影響で不動産会社への訪問を控えた生活者は20.4%。

■「新型コロナウイルスによる事業影響と今後に向けた対応策実施に関する調査」(ハイアス・アンド・カンパニー)
新型コロナウイルス感染拡大の影響で非対面での営業接触、面談深耕を余儀なくされる中、全国の中小建設・不動産業者のICTを活用した顧客接点の意向は、情報発信や顧客とのコミュニケーションのいずれにおいても6割以上が導入もしくは導入計画があると回答。
ICTを活用した顧客接点の進展は一過性のものではなく、今後ますます拡大していくのではないでしょうか。




ニュースフラッシュ
令和元年度の貸家の新設着工戸数
前年度比14%減の33万戸と3年連続の減少



令和元年度(平成31年4月~令和2年3月)の貸家の新設着工戸数は、前年度比14.2%減の33万4509戸と、3年連続の減少となりました。

国土交通省から公表された調査報告で分かったのですが、これは過去20年度の中で下から5番目の規模。
同時期で最も多い14年前の平成18年度と比べて20万戸も減少しています。

地域別の傾向を見ると、首都圏、近畿圏、中部圏ともに前年度比2桁のマイナスを示し、都道府県別でも長野、滋賀、和歌山、愛媛県など8県が前年度比プラスのほかは全てマイナスとなっています。
マイナス幅も茨城の21.8%、埼玉の25.5%、福岡の20%など20%を超える大幅な減少が14県に及んでいます。

ただ、統計的に捉えると、過去の実績との比較で減少幅が浮き上がるものの、持ち家、分譲住宅、社宅を含めた住宅全体の新設着工で見ると、新設着工全体の4割を貸家、つまり賃貸住宅が占めているものです。



賃貸市場は新築~築40年物が6割近くを占める
物件を探す窓口の首位は不動産会社


年に一度、国土交通省から「住宅市場動向調査報告書」が公表されます。
最新の令和元年度版からは、今日の賃貸住宅入居者の全体像が読み取れます。
主要部分をまとめてみました。

この調査は首都圏、近畿圏、中部圏を中心に実施されたもので、賃貸住宅市場及び入居者の行動様式を理解するのに参考になります。

まず、賃貸住宅の選択理由として、「家賃が適切だった」が最も多く、全体の50%を占め、次いで「住宅の立地環境が良かった」「住宅のデザイン・広さ・設備等が良かった」「昔から住んでいる地域だった」「親・子供などと同居・または近くに住んでいた」が続き、これらがベスト5となっています。

そして7位に「信頼できる不動産業者だった」が選ばれ、過去5年間ほぼ同じ結果となっています。

家賃、立地・環境、部屋の広さ・設備の3点に賃貸住宅を選ぶ理由が集約され、その上で、「信頼できる不動産業者」の的確なアドバイスで契約されているのがよく分かります。

物件に関する情報収集は「不動産業者で」が最多

また、賃貸住宅を選ぶ際に重視した設備は「間取り・部屋数が適当」「住宅の広さが十分」「住宅のデザインが気に入った」「浴室の設備・広さが十分」「台所の設備・広さが十分」などで、5年間変わらない上位5項目です。

次に、物件に関する情報収集の方法として「不動産業者で」が約50%と最も多く、次いで、「インターネットで」が約41%と、賃貸物件を探す窓口は専門の不動産会社は首位となっています。
過去5年間を見ても主流は不動産業者とインターネットのようです。

ところで、賃貸住宅の建築時期(築年)は、「平成27年以降」が約28%、「平成17年~26年」13%、「平成7年~16年」約17%、「昭和60年~平成6年」が約20%で、平均築後年数は17年。
このように賃貸市場は、新築~築15年の物件が全体の41%を占め、築25年の物件の17%を合わせて、新築~築40年者が6割近くを占めています。

なお、民間賃貸住宅の入居世帯の世帯主は、30歳未満が約30%、30歳代が約30%。
平均年齢は約39.2歳です。
入居世帯の居住人数は、1人が約39%で最も多く、次いで2人が約31%、3人が16.4%で、一世帯当たりの平均居住人数は2.1人となっています。




賃貸経営ワンポイントアドバイス
住居確保給付金と住宅セーフティネット法を軸に、
住居の困った方々の公的支援始まる



申し込みが相次ぐ「住居確保給付金」

新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、国の生活困窮者向けに各種の救済が広がっています。
中でも市民の生活の基盤となる住居に対して、相次いで支援策が打ち出されています。
そこで改めて、住居(賃貸住宅)の公的支援の内容を紹介します。

公的支援をして今、最もタイムリーな家賃救済策と見られているのが「住居確保給付金」で、各地の受付窓口で申し込みが相次いでいます。

国としては基本的には、3年前の平成29年10月に、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律の一部を改正した「住宅セーフティネット法」に基づきバックアップしています。
その主な枠組みは①住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度②登録住宅の改修・入居者への経済的支援③住宅確保要配慮者のマッチング・入居支援の3点です。

国の政策として、住居に困っている高齢者・障害者・外国人・低額所得者・子育て世帯などの住宅確保要配慮者の入居及び居住支援を応援する住宅セーフティネット制度の広がりに注力しています。

「住居確保給付金」と「住宅セーフティネット法」を政策の軸に、賃貸入居者及び住まい探しに困った方々の生活を国を挙げて後押しする方針を打ち出しています。

困った時はお互い様といった気持ちはあっても、いきなり家賃の減額や支払期日の猶予といった要望に応えるのはハードルが高い場合、その前に公的な支援策を十分に検討して、使えるものは役立ててみるのがまず第一歩ではないでしょうか。

それぞれ制度を活用するには書類作成の手間があるのと、活用方法が不慣れな間は何かと不便ですが、相談窓口が整備されていますので、この機会に住宅セーフティネット制度などをチェックしてみてはいかがでしょうか。