2020年8月号エスト賃貸経営新聞の賃貸経営新聞 | 埼玉の不動産投資・収益物件・建物管理|株式会社エストハウジング

2020年8月号エスト賃貸経営新聞

景気の先行き判断は上昇を示すものの力強さに欠ける動き
コロナ禍の影響を受けて貸家の新設投資環境は弱気


新型コロナウィルスの感染拡大が続いています。
経済活動にも支障が生じ、急速な回復に結び付くV字回復といきません。
様子見の中、活動の枠を工夫して広げざるを得ないのではないでしょうか。
賃貸市場を取り巻くここ1ヵ月の経済事情をまとめてみました。


7月14日から家賃の一部を国が補助する「家賃支援給付金」の申請の受け付けが始まりました。
この家賃支援給付金は令和2年度第2次補正予算に約2兆円が計上され、5月の緊急事態宣言の延長等により、売上の減少に直面する事業者の事業継続を下支えするため、地代・家賃(賃料)の負担の軽減に支給されるものです。

最長9ヵ月分の賃貸住宅の家賃が支払われる「住居確保給付金」と合わせて、コロナ禍によって苦境に立たされている個人、中小企業の救済に役立つと期待されています。

ところで、景気の見通しについて、内閣府が7月8日に公表した、景気の指標となっている6月の景気ウォッチャー調査は、「新型コロナウイルス感染症の影響による厳しさは残るものの、持ち直しの動きがみられる。先行きについては、感染症の動向を懸念しつつも、持ち直しが続くとみている」とまとめています。
とくに、2~3ヵ月先の景気の先行きに対する判断DIは、家計動向関連、企業動向関連、雇用関連の全てのDIが上昇したことから、前月を7.5ポイント上回っています。

また、帝国データバンク(TDB)の6月調査の「TDB景気動向調査(全国)」結果によりますと、6月の景気DIは9ヵ月ぶりに前月比2.4ポイントプラスで、平成28年11月以来3年7ヵ月ぶりに全10地域で下落傾向に歯止めがかかっています。
国内景気は、経済活動が再開して徐々に動き始めたことで、急落傾向が下げ止まり、今後は後退傾向が一時的に下げ止まるものの、力強さに欠ける動きが続くと見られる、と捉えています。

全ての地域が判断を引き下げ

一方、日本銀行が7月9日開催の支店長会議に向けて収集した情報をもとに集約した、地域経済報告「さくらレポート」(令和2年7月)によりますと、各地域の景気の総括判断は、新型コロナウイルス感染症の影響により、前回調査の4月時点に続き、全ての地域が判断を引き下げており、「悪化している」または「厳しい状態にある」としています。
とりわけ住宅投資については、ほぼ全国的に「弱めの動き・減少している」と、判断しています。

中でも賃貸住宅については、「貸家の着工では、景気の先行き不透明感から、オーナーが契約を先送りするケースがみられる」(名古屋)に代表されるように、各地で新型コロナウイルス感染症の影響によって、投資環境が弱気になっていることで、新設を見送る傾向が見られるとしています。




賃貸住宅の「テレワーク需要」
コロナ禍で賃貸住宅ニーズにもテレワークという要素が加わる


多様な働き方として、在宅勤務の「テレワーク」が新型コロナウイルス感染症拡大とともに、急激な広がりを見せています。

テレワークの最新傾向について、リクルート住まいカンパニーが4月中旬に実施した「新型コロナ禍を受けたテレワーク×住まいの意識・実態」調査の結果を見ると、実態が読み取れます。

「会社員、公務員の47%がテレワークを開始。今後もテレワークを継続したいテレワーカーの割合は84%で、引き続きテレワークを行う場合、48%が間取り変更を希望し、24%が現在の家からの住み替えを希望している状況」とあります。

また、旭化成ホームズの「在宅ワークに関するくらしの変化について」の調査結果によりますと、「集合賃貸住宅に住む人の在宅ワークをする場所はLD(リビング・ダイニング)派が71%。在宅ワークで重視するポイントは、仕事に集中できる環境」としています。

「テレワーク向け物件」の整備進む
ネット環境の完備は必須


こうしたテレワーク需要の高まりを受けて賃貸マーケットは素早く反応して、「テレワーク、在宅勤務向け物件」の整備が進められています。
そして、テレワークといえばインターネットは必須ですから、ネット環境の完備が条件となります。
そのために接続ルーターや回線を整備して支障なく仕事ができる快適な速度を保つことがテレワーク需要に応える決め手となります。

コロナ禍で社内の各方面で変化が進んでいますが、賃貸ニーズについてもテレワークという要素が加わったといえそうです。




ニュースフラッシュ
賃貸経営者の主な職業が「会社員」が最多
所有する賃貸住宅は「2~10戸」が中心



国土交通省から昨年12月に公表された「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査」(家主)結果に、現在の賃貸住宅経営者の属性がよく表れていますので一部を紹介します。

主な職業は「会社員」が最も多く40.6%、次いで「専業主婦(主夫)」12.1%、「無職」10.9%、「会社経営・役員」10.4%、「農林漁業以外の自営業」7.5%と続き、これら上位5つで8割を超えています。

賃貸住宅経営の経験年数については、「10~19年」が最も多く30.2%、次いで「5~9年」27.8%、「20年以上」20%で、これらを合わせて8割近くとなっています。

所有する賃貸住宅の総戸数は、「2~10戸」43%、「1戸」33.3%で全体の8割近くを占める一方、「11~20戸」12.8%、「21~30戸」4.8%、「31~50戸」3.9%、「51~100戸」1.4%、「101戸以上」0.7%と、規模が大きくなるほど割合は減少するものの、一定の割合で存在しています。




土地白書・路線価等に見る土地の最新動向
コロナ禍前の土地需要の好調さを映す


新型コロナウイルス感染症による土地価格への影響が注目される中、ここ1ヵ月に公表された土地に関するニュースから、最新の土地の動向をまとめてみました。

国土交通省から年1回公表される土地白書の令和2年版では、人口減少社会における土地の利用と管理に係る取組み、土地基本法等の改正と土地基本方針に基づく総合的土地政策について取り上げています。

令和元年度の不動産市場等の動向は、地価変動の推移として住宅地・商業地とも全国平均で上昇が継続。
とくに、主要4市以外の地方圏でも商業地が28年ぶりに上昇して、オフィス市場は東京の都心5区、大阪、名古屋、札幌、仙台、福岡各都市の空室率が低水準で推移。

土地の資産性に対する国民の意識については、「土地は預貯金や株式などに比べて有利」とする割合が低下傾向、としています。
これらは昨年から今年春までのコロナ禍前の土地需要の好調な時の様子です。

また、全国の主要都市100地区の高度利用地等における地価動向を調査した、「令和2年第1四半期の地価LOOKレポート」によりますと、令和2年1月1日~4月1日の調査結果は、上昇地区数が97地区から73地区に減少し、横ばい地区数が3地区から23地区に増加しています。
商業系では元町(横浜市)、岐阜駅北口(岐阜市)、丸亀町周辺(高松市)の3地区、住宅系では大濠(福岡市)の1地区の計4築で下落。
下落は平成269年第2四半期以来です。

訪日外国人客の減少が不動産投資に影響

緩やかな上昇が続いたこれまでの傾向に変化が見られる主な要因は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、多くの地区で需要者の様子見など取引きの停滞が見られ、地価の上昇傾向が鈍化したことや、地価動向の変化が大きかった地区では、とくにホテル、店舗需要の比重が高く、コロナ感染症の影響が大きかったことが挙げられます。

一方、令和2年1月1日から12月31日までの間に相続、遺贈、贈与により取得した財産に係る相続税及び贈与税に財産を評価する場合に適用される令和2年分の路線価が国税庁から発表されましたが、全国約32万地点の標準宅地は令和元年比で1.6%の上昇で、5年連続してアップしました。

対前年比で大きく上昇したの北海道、東京都、京都府、大阪府、広島県、福岡県、沖縄県の1道1都2府3県。
やはり訪日外国人客の増加に伴う再開発が上昇をけん引したものです。

今年の路線価については国税庁では、訪日外国人客が激減していることから、今後、地価がどのように推移するか見極めて減額修正を検討している、との報道が見られます。




賃貸経営ワンポイントアドバイス
<短期連載>「感染症対策のガイドラインを遵守」
「新しい生活様式」として3つの実践が提案される



日々の生活で実践して脇を固めたいものです

これからも新型コロナウイルス感染症とは長い付き合いになるのではないでしょうか。
そのためにも新型コロナウイルス感染症対策本部から公表されている「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」を日々の生活で実践して、脇を固めておきたいものです。

改正を重ね、国の感染症対策として強調されているのは「三つの密を徹底的に避ける」「人と人との距離の確保」「マスクの着用」「手洗いなどの手指衛生」などの基本的な対策のより一層の推進です。

不動産業界向けには国土交通省から「不動産業における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン(業界団体向け)」が公表されています。

また、新型コロナウイルス感染症専門家会議からの提言を踏まえた、「新しい生活様式」の実践例が厚生労働省ぁら公表されています。
感染防止のための基本的な考え方として、「事業者は社会全体の感染拡大防止に繋がることを認識したうえで、個々の職場の特性に応じた対策を講じ、『三つの密』が生じ、クラスター感染発生リスクの高い状況を回避するため、最大限の対策が必要」としています。

「新しい生活様式」として、大きく次の3つの実践が提案されていますが、基本は対策本部や国交省のガイドラインと共通しています。
①身体的距離の確保②マスクの着用③手洗い、の感染防止の3つの基本。
そして、咳エチケットの徹底、エアコン併用で室温を28度以下とするこまめな換気などです。

さらに、働き方の新しいスタイルとして、テレワークやローテーション勤務、時差通勤でゆったりと、オフィスは広々と会議はオンライン、対面での打ち合わせは換気とマスクの着用を挙げています。

これらは百年前に流行したスペイン風邪の対処法と変わらないそうですが、とくに無理なく実践できる内容ですから、これらを実践して何とか終息に向け堪えたいものです。