2020年12月号エスト賃貸経営新聞の賃貸経営新聞 | 埼玉の不動産投資・収益物件・建物管理|株式会社エストハウジング

2020年12月号エスト賃貸経営新聞

国内景気は緩やかに持ち直すが、景気のV字回復は期待薄
今後、賃貸経営において長期の「コロナ対応」が不可欠


今年も残りわずかとなりました。
今年を振り返りますと、なんといってもコロナ禍によって社会が激変したことが一番に挙げられます。
今年一年のコロナ禍における賃貸市場に関する話題、景気動向などをまとめてみました。


今年初めには、現在の「賃貸市場を取り巻く主なトピックス」として、次の4点が考えられました。

①「消費税増税が及ぼす不透明感の強い景気動向」、②「4月1日に施行される『民法改正』の影響、③「IT環境の急速な進化と多様化が進む入居者ニーズ」、④「融資審査の厳格化による賃貸住宅新築減少の一方、増える空き家」などを今年、賃貸市場が直面する主要な経営上の課題点として挙げました。

ところが、2月のクルーズ船・ダイヤモンドプリンセス号で新型コロナウイルスの感染症が発症して以降、社会は一変、オリンピックイヤーのお祭り気分は雲散して、今日まで国を挙げた非常時体制が続いています。

本紙におきましても春先以降、コロナ関連のニュースを中心に賃貸経営のあり方を見てきましたが、賃貸市場の本来の課題事項は先の4項目に集約されると思われます。
そして、今現在はこうした4項目に5点目の「コロナ禍対応」が加えられ、来年にかけても懸案事項として、長期にわたっての取り組みが求められているところです。

経済の動向については、当初に目論んだような景気のV字回復とはいかないようですが、今後の予測を押さえておきたいと思います。

景気の指標となっている内閣府が毎月公表する景気ウォッチャー調査(街角景気)によりますと、10月は「新型コロナウイルス感染症の影響による厳しさは残るものの、着実に持ち直している。先行きについては、感染症の動向を懸念しつつも、持ち直しが続くとみている」とまとめられ、2~3ヵ月先の景気の先行きに対する判断では、家計動向関連、企業動向関連、雇用関連の全てのDIが上昇したことから、前月を0.8ポイント上回った、としています。

2~3ヵ月先の景気判断も全てのDIが上昇示す

また、11月16日に内閣府から発表された今年7~9月期の実質GDP(国内総生産)の成長率は5%で、年率換算では21.44%と4期ぶりのプラスになりました。

一方、(株)帝国データバンクが発表した『TDB景気動向調査』結果では、「5ヵ月連続で前月比2.2ポイントプラスの33.8となった。国内景気は、生産・出荷や個人消費が上向き、低水準ながらも緩やかに持ち直してきた。今後の景気は、新型コロナウイルスの感染拡大防止と経済活動再開のバランスに慎重に対応しながら、緩やかに上向いていくとみられる」としています。




賃貸住宅市場最新ニュース
国土交通省公表の不動産価格指数
マンション・アパート(一棟)が上昇



国土交通省が公表した、7月・令和2年第2四半期分の「不動産価格指数」によりますと、7月分の全国の住宅総合は、平成22年平均を100として、前月比0.1%減の112.1で、住宅地は前月比5.1%減の96.1、戸建住宅は同1.2%増の99.9、マンション(区分所有)は同0.8%減の150.9となっています。

一方、令和2年第2四半期分の商業用不動産の不動産価格指数では、全国の商業用不動産総合は前年比2.0%減の136.4、オフィスは同8.1%減の136.6、マンション・アパート(一棟)は同2.0%増の134.4、とマンション・アパートの上昇が目立っています。

単身世帯が増加する見通し
夫婦と子の世帯は減少


国土交通省はこのほど、令和3年に予定されている「住生活基本計画」の策定を前に、「社会資本整備審議会住宅宅地分科会中間とりまとめ」を公表しました。

それによりますと、住生活を巡る現状と課題として、人口減少・少子高齢化の進展により、子育て世帯数は減少しています。
また、共働き世帯、ひとり親世帯は増加しており、専業主夫・主婦世帯は減少しています。

住宅・居住環境に関しては、世帯全体に比べ「収納の多さ」「住宅の広さ」等に対する不満が大きい。
一方、生活空間のゆとりよりも、仕事や子育てにおける利便性が重視される傾向が見られるようです。

また、世帯構成の変化については、世帯類型を見ると、単身世帯が最も多くなっており、今後も増加する見通しで、ひとり親と子の世帯は増加、夫婦と子の世帯は減少の見通しである、としています。




ニュースフラッシュ
「収益が見込めないため」住宅宿泊事業廃止
新型コロナウイルスの関連が廃止の理由の半数



国土交通省の観光庁は11月に、「住宅宿泊事業の廃止理由調査」結果を公表しました。
令和2年9月8日~10月18日の間に自治体に廃止の届出があったものが調査対象です。

それによりますと、廃止の理由で最も多かったのは、「収益が見込めないため」で、全体の49.1%を占め、前年調査に比べ大幅に増加しています。
次に、「旅館業または特区民泊へ転用するため」が8.3%と続いています。

廃止の理由の中で、新型コロナウイルス関連が全体の51.9%を占め、コロナの影響が最も多かったのは「収益が見込めないため」で、コロナ関連は94.4%を占めています。
「その他」では「事業は完全に廃業」が33件で、「事業継続の意思あり」の12件を初めて上回りました。

昨年の訪日外国人数が過去最多を記録した一方、今年は一変して、コロナ禍で激減したことが大きく影響して宿泊需要を圧迫したことが原因と見られています。




調査結果から見る入居希望者の傾向
最新の満足度の高い設備に人気集まる


賃貸物件を探す顧客の気持ちや設備等の入居に際しての要望を調査した結果が情報サービス会社などから発表されますが、今年発表されたデータから入居者の傾向をまとめてみました。


(株)リクルート住まいカンパニーが、賃貸物件を契約した人を対象に実施した「2019年度賃貸契約者動向調査」(首都圏)結果によりますと、設備の満足度で4年連続1位となっているのは、「24時間出せるゴミ置き場」。
2位が「無料インターネット完備」。

プライバシーやセキュリティに関しては、「セキュリティシステム(警備会社)」「防犯カメラ」の満足度が減少傾向にある一方、「TVモニター付きインターフォン」「スマートキー」「温水洗浄便座」「浴室乾燥機」「エアコン付き」「オール電化」の満足度が2年連続で上昇し、中でも「スマートキー」が大幅に上昇しました。

また次に引っ越す際にほしい設備として、「エアコン付き」「独立洗面台」「TVモニター付きインターフォン」の希望度が高くなっています。
続いて、「24時間出せるゴミ置き場」「宅配ボックス」が昨年度より上昇。
「追い焚き機能付きの風呂」の希望度は2人世帯が最多です。

家賃が上がってもほしい設備と許容額が高いのは「独立洗面台」「オートロック」「システムキッチン」「エアコン付き」で、約1700円。
ひとり暮らし世帯では、「スマートキー」の許容額が最も高く、ファミリー世帯では、「セキュリティシステム(警備会社)」の許容額が最も高くなっています。

テレワーク・在宅勤務には「ネット環境の充実」がおすすめ

一方、不動産情報サービスのアットホーム(株)が調査した、不動産のプロが選ぶ「テレワークにおすすめの住まいの条件」ランキングによりますと、テレワーク・在宅勤務をしているシングルにおすすめの住まいの条件は、約7割が「インターネット接続料無料(ネット環境の充実)」と回答しています。

2位は「テレワークスペースを確保できる間取り(仕事用のスペースの充実)」、3位は「テレワークスペースを確保できる広さ」。
テレワークでは、同僚や取引先とのやり取りが全てオンラインになるため、ネット環境の充実をおすすめするケースが多いようです。

カップルについても、1位はやはりシングル同様、「インターネット接続料無料(ネット環境の充実)」で、2~3位も同様となっています。




賃貸経営ワンポイントアドバイス
「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」が策定されました


具体的な規制の対象を事例等で明示

随分時間をかけて審議されてきましたが、「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」が策定され、国土交通省から公表されました。

策定された「ガイドライン」は、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」のうち、12月15日に施行されるサブリース業者とオーナー様との間の賃貸借契約の適正化に関する措置について、具体的な規制の対象を事例等で明示したものです。

主な内容は、不当勧誘等の禁止の対象となる「勧誘者」に、建設請負や不動産売買の際に契約の勧誘を行う建設業者や不動産業者、サブリース業者から勧誘の依頼を受けた賃貸住宅のオーナーが該当することを明確化しました。

また、「家賃保証」等の誤認を生じやすい文言を広告に使用する場合は、その文言に隣接する箇所に、定期的な家賃の見直しがある場合にはその旨及び借地借家法の規定により家賃が減額され得ることを必ず表示しなければならないこととしました。

さらに、「家賃保証」等の誤認を生じやすい文言を広告に使用する場合の表示方法。
また、契約の締結前に、オーナー様に対し、契約条件に関わらず借地借家法の基づき家賃が減額され得ること等を書面に記載して説明しなければならないことを明確化しました。

ところで、サブリース契約は入居者の募集や家賃集金、クレーム処理の煩雑な業務から解放され、家賃が保証されることから、賃貸経営が楽にできる理想的な賃貸経営のスタイルとさえいわれます。

ただ、借り上げる運営会社にリスクが生じることから、家賃設定、契約期間、再契約の取り扱い、入退去時の補修・修繕費用の分担等が契約で取り決められています。
よく誤解が生じるのが、家賃保証といって払い込まれる家賃は固定ではなく、金額は期間を決めて見直し(改定)されるという点です。