2021年3月号エスト賃貸経営新聞の賃貸経営新聞 | 埼玉の不動産投資・収益物件・建物管理|株式会社エストハウジング

2021年3月号エスト賃貸経営新聞

コロナ禍の中で東京都、大阪府などの8都府県で転入超過
賃貸住宅新設の抑制が賃料の落ち着きに影響


年が明けて2ヵ月が経ちますが、ニュースは新型コロナウイルスに関連することに集中しています。
それでもワクチンの接種が始まり、予防効果に大きな期待が寄せられているところです。
ここ1ヵ月の賃貸市場の最新動向をまとめてみました。


今春の賃貸市場ですが、大きな変動が見られずコロナ禍にあっても、部屋をお探しのお客様の問い合わせ、来店は続いています。

昨年来、コロナ禍でリモートワークが広まったことから、賃貸ユーザーが郊外に向かっている動きが一部に見られますが、その一方で、テレワーク業務を縮小する企業が出始め、学生の転居の動きも出ているようです。

昨年1年間の全国の市区町村間、都道府県間、都道府県間内の移動者数を見る限り、前年比でやはり減少していますが、東京都、大阪府、福岡県などの8都府県では転入超過となっています(「賃貸マーケット情報」参照)。

このようにリモートワークは賃貸住宅市場において、まだ市場の変革を促すまでに至っていないようです。
こうしたことから、賃料等については、コロナ禍の影響は限定的で、全体に横ばい気味、やや堅調に推移しています。

賃料の全体傾向については、不動産情報サービスのアットホーム(株)が1月27日に公表した昨年12月の「賃貸マンション・アパート」募集家賃動向によりますと、「マンションの平均募集家賃は、神奈川県・埼玉県・千葉県・名古屋市が全面積帯で昨年同月を上回り、大型ファミリー向きマンションの上昇率トップ3はいずれも首都圏。神奈川・千葉県では平成27年1月以降最高値を更新し、アパートは東京23区が全面積帯で、平成27年1月以降最高値を更新」としています。

コロナ禍の動向が先行きの景気を左右

賃貸住宅市場に大きな変化がなく、賃料で落ち着きを見せているのは、アパート・マンションの新設が抑制され、昨年12月には28ヵ月連続の減少となっているなど、供給のバランスがとれていることが影響しているのも見逃せません。

最後に、賃貸市場を取り巻く足下の経済情勢について官民の調査データを押さえておきます。

景気の指標となっている内閣府公表の令和3年1月の景気ウォッチャー調査では、「景気は新型コロナウイルス感染症の影響により、このところ弱まっている。先行きについては、感染症の動向に対する懸念がみられる」とまとめています。

また、(株)帝国データバンクの令和3年1月調査は「国内景気は緊急事態宣言の再発出などで個人消費関連を中心に2ヵ月連続で悪化した。今後の景気は、一時的な後退はみられるものの、春頃を底として、緩やかに上向いていくとみられる」と捉えており、やはりコロナ禍の動向によって、景気の波は大きく左右されるようです。




賃貸住宅市場最新ニュース
賃貸マーケット情報


帝国ホテル東京「サービスアパートメント」着手

帝国ホテル東京が新事業として、2月1日から「サービスアパートメント」を始め、話題を集めています。

サービスアパートメントとは、1ヵ月~数ヵ月の中長期出張者を対象とした、ホテル機能と賃貸マンションの住みよさを合わせた次世代の高級賃貸マンション。
家具、什器、備品、リネンサプライ、清掃サービス付きで、スタイルとしては賃貸マンションですが、24時間フロントサービスやインフォメーションサービスがついている、ホテルに近い住居です。

帝国ホテルでは3タイプに分けて、料金を月額(30泊)36万~72万円に設定しています。

ここ4、5年の間にホテルの新設に合わせて、ホテル内にサービスアパートメント・高級賃貸施設の建設が見られますが、帝国ホテルがこうしたサービスに着手したことにちょっと驚かされます。


総務省、令和2年結果の「住民基本台帳人口移動報告」

コロナ禍における全国的な移動が注目されていましたが、総務省はこのほど令和2年結果の「住民基本台帳人口移動報告」を公表しました。

それによりますと、令和2年の日本国内における日本人と外国人合わせた市区町村間移動者数は、前年比2.7%減少の525万6千人となりました。
都道府県間移動者数は、前年に比べ4.1%の減少の246万4千人、都道府県内移動者数は、前年に比べ1.5%減少の279万2千人。
 一方、都道府県別の転入と超過数を見ると、転入超過となっているのは東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、福岡県、沖縄県、滋賀県の8都府県。
転入超過数が最も縮小しているのは東京都の5万2千人で、転出超過となっているのは愛知県、兵庫県、福島県、長崎県など39道府県。
転出超過数が最も拡大しているのは愛知県。
東京圏、名古屋圏、大阪圏の3大都市圏の全体で、転入超過数は8万2千人と前年に比べ4万8千人の縮小となっています。




ニュースフラッシュ
令和2年の貸家の新設は3年連続減少
令和2年12月は28ヵ月連続の減少



国土交通省はこのほど、令和2年の新設住宅着工戸数を発表しましたが、それによりますと、令和2年1~12月の新設住宅着工の総戸数は、持家、貸家、分譲住宅が減少したため、前年比9.9%減の81万5,340戸で、4年連続の減少となっています。

このうち、アパート・マンションの貸家は、前年実績10.4%減の30万6,753戸で、3年連続の減少です。
昨年1年間の貸家の新設を過去10年の実績で見ると、平成23年以降、下から2番目の規模で、さらにさかのぼって過去20年で見ても下から3番目となっています。

貸家新設の全国的な傾向では、前年比で3大都市圏とともに、都道府県別でも京都府、鳥取県、愛媛県、高知県、長崎県、大分県、鹿児島県の1府6県を除いて、全てマイナスとなっています。

ちなみに、令和2年12月の貸家の新設着工は、前年比11.5%減の2万4,423戸で、民間資金による貸家も減少したため、貸家全体で28ヵ月連続の減少です。




「デジタル改革関連法案」でデジタル社会目指す
法案の推進で賃貸現場のIT化が加速


日本社会のデジタル推進を図る「デジタル改革関連法案」が2月9日に閣議決定され、大きく一歩前進しました。
同法案が不動産・賃貸住宅市場にどのような影響を及ぼすか、問題点を探ってみました。


閣議決定されたデジタル改革関連法案は、デジタル社会形成基本法案、デジタル庁設置法案、デジタル社会の形成を図るための関連法律の整備に関する法律案などの6法案で構成され、目玉となるのが「デジタル庁」の創設です。
政府の方針は、デジタル庁に強い調整機能を持たせて、デジタル改革の司令塔としての役割に期待を寄せています。

デジタル改革関連法案の中で不動産・賃貸住宅市場と関係が深いのが、デジタル社会の形成を図るための関連法律の整備に関する法律案。
個人情報保護制度の見直しやマイナンバーを活用した情報連携の拡大を図り、押印・書面の交付等を求める手続きの見直しなどについては48の法律を改正します。

宅地建物取引業法の一部改正、借地借家法の一部改正、建物区分所有等に関する法律の一部改正などを含み、押印を求める各種手続きについてその押印を不要とするとともに、書面の交付等を求める手続きについて電磁的方法により行うことを可能とする、としています。

例えば、借地借家法第三十八条第一項の規定による建物の賃借の契約がその内容を記録した電磁的記録によってされた時はその契約は、書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する、というものです。

9月1日の法案の施行によって
法と環境整備が図られる


ところで、賃貸市場では、ここ1~2年の間に「不動産とテクノロジーの融合」が急速に進み、最先端の技術を活用して不動産に関するサービスが展開されています。
AI(人工知能)を利用した物件提案やIoTを利用したスマートロック、防犯カメラ、VR(バーチャルリアリティ)を利用した内覧システムなどと幅広く、高機能化のスピードには目を見張るものがあります。

さらに、ハイレベルなメカニックの実用化とともに、IT重説の本格運用を機に、賃貸現場のIT化が加速しています。
それに今回のデジタル改革関連法案が、令和3年9月1日に施行され、法と市場を取り巻く環境整備が図られることで、業界各方面のデジタル化がスピードアップするとみられます。




賃貸経営ワンポイントアドバイス
「賃貸経営と地震対策」入居者の安全と住環境の整備を図って地震に備える


普段から建物、敷地内の危険な要素を取り払っておきます

2月13日深夜に、平成23(2011)年の東日本大震災の余震とみられる最大震度6強を観測した地震が発生。
東北や関東の10件で負傷者が百人を超えましたが、死者や行方不明者はいないようです。

改めて前触れもなく起きる地震の怖さを実感します。
そこで、地震大国のわが国で賃貸経営をする上で、地震対策として何に気を付ければいいのか、以下、まとめてみました。

まず第一に、「入居者の安全と住環境の整備を図る」ことです。
地震対策を含め、危機管理上、普段から極力建物及び敷地内の危険な要素を取り払っておきます。
非常扉や非常階段周辺を整備したり、不要なものを片付けておけば何かあっても、事故防止の対策となります。

次に、建物の耐震性を確保するために「建物の保全(安全)対策」を図ります。
耐震診断を受けたり、耐震・耐久工事を完了しておきます。
そして、大事な財産である賃貸住宅を守るために、必要経費として処理できる「地震保険」に加入します。

地震保険は、地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする火災・破損・埋没または、流失による損害を補償する地震災害専用の保険です。
火災保険に付帯する方式での契約となるので、火災保険への加入が前提となっています。

このほかに、「賃貸借契約書」を整備して、「罹災法」の項目などを理解し、仲介・管理において普段から取り引きのある弊社スタッフとの連携を密にして下さい。
こうした準備をしておくことが、万一の地震に備える有効な策だと思います。

また、災害時に備えた「住まいのしおり」やハザードマップなどを用意しておきます。

今日の賃貸住宅の大半は、昭和56年の新耐震基準以降に建てられていますが、もしそうでない場合は、この機会に耐震・耐久工事を手掛けてみてはいかがでしょうか。




ちょっと一服
非対面型オンラインの要望が強くなっているのを実感


春の本格的な訪れを知らせてくれる桜の開花を前に、部屋のご紹介が続いています。
コロナ禍の下、例年通りとは参りませんが、春の移動に合わせた方々の新入居がこれから本格化します。

賃貸仲介現場におきましても、コロナ禍の影響を受けて賃貸ニーズも少しずづ変化の兆しが出ています。
とくにお客様の声として、非対面型オンラインの要望が強くなっているのを実感します。

また、インターネットなどの通信環境が整っていれば働く場所を選ばないテレワークについて、最近の調査結果などを見ていますと、テレワークをやめたり、利用頻度を減少するといった傾向も出始めているようです。

ただ、スマホを使って内見予約から重説・契約までを完結するIT化の大きな流れが時代の要請とされているだけに、テレワークも広がっていくと思われます。
それでもテレワーク化の内容等については十分に見極めて対応することが重要と思います。

いつもながら、最終打ち合わせの携帯電話等へのご連絡に、ご協力をお願いいたします。