2021年8月号エスト賃貸経営新聞の賃貸経営新聞 | 埼玉の不動産投資・収益物件・建物管理|株式会社エストハウジング

2021年8月号エスト賃貸経営新聞

金融機関の貸出の厳格化と本格的な市場の回復が足踏みする中
5月の貸家の新設、前年同月比で3ヵ月連続の増加


8月を迎え、賃貸ビジネスも後半戦となりました。
お盆が明ければ11月中頃まで、賃貸住宅市場は秋の繁忙期で忙しくなります。
ただし、新型コロナウイルス感染症がどのような落ち着きを見せているかです。
景気の動向を交え、賃貸市場の概況を探ってみました。


景気の指標となっている内閣府が月1回公表する「景気ウォッチャー調査」の最新(6月)の結果は、現状判断DIが前月からやや上昇し、「景気は、新型コロナウイルス感染症の影響による厳しさは残るものの、持ち直している。先行きについては、感染症の動向を懸念しつつも、ワクチン接種の進展等によって持ち直しが続くとみている」とまとめています。

日本銀行が7月5日に開催の支店長会議に向けて収集した情報をもとに集約した、地域経済報告「さくらレポート」は、各地域の景気の総括判断は、「『持ち直しのペースが鈍化している』とする地域があるなど感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、多くの地域では『基調としては持ち直している』、または『持ち直しつつある』」と捉えています。

また、賃貸住宅の投資に対する企業の声として、「投資利回りの低下や金融機関の貸出態度の厳格化」「大学に入学する学生が減って、アパートの空室が目立つ」「金融機関の慎重な融資姿勢もあって、新規物件の需要は居住用・投資用とも増え難い状況」など、金融機関の貸し出し厳格化と新型コロナウイルス感染症の影響によって、投資スタンスを一層慎重化させている、とまとめています。

これらは政府の景気に対する公式な見解ですが、やはり新型コロナウイルス感染症の終息が今後の景気回復のカギとなっているのは間違いないところです。

5月の人口移動者数は増加
緊急事態宣言で回復は停滞


ところで、総務省が発表した5月の全国の人口移動者数は、4月と一転して市区町村間・都道府県間・都道府県内とも、全て前年同月に比べ増加しました。
このまま進めば人の往来も回復し、市場が好転に向かうと期待されましたが、東京都に7月12日から8月22日までとする緊急事態宣言が発令され、国土交通省から、新型コロナウイルス感染症対策として、不要不急の都道府県間の移動は、極力控えるようにお願いが出されたことから、本格的な市場の回復はお預けとなりました。

日銀の「さくらレポート」にも報告されているように、「投資利回りの低下や金融機関の貸出態度の厳格」で、賃貸住宅関連の投資が鈍い傾向にある、とされているのですが、貸家の新設着工は増加の勢いで、5月は前年同月比4.3%増で3ヵ月連続の増加となりました。
今年1~5月の合計でも前年同月比増となっています。
民間資金による貸家が増加し、公的資金による貸家も増加したため、貸家全体で増加となったものです。





「令和2年国勢調査」速報結果
令和2年10月1日現在の世帯数5,572万世帯
5年間で4.2%増。41都道府県で増加



賃貸住宅の需要と密接な関係にある世帯数の最新の数字がこのほど、総務省統計局から昨年10月1日に調査した「令和2年国勢調査」結果の速報として公表されました。

それによりますと、10月1日現在のわが国の世帯数は5,572万世帯となり、平成27年から227万世帯、率にして4.2%の増加となりました。

世帯数の推移を見ると、調査開始から一貫して増加を続けているものの、昭和50年~55年以降、5~7%台で推移してきた増加率が、平成22年~27年は2.9%と低下。
その後、平成27~令和2年では4.2%の増加となりました。

人口減少の中、一貫して増加
半面、1世帯当たり人員は減少


平成27年~令和2年の生態数の増減を都道府県別に見ると、世帯増加率は沖縄県が9.3%と最も高く、次いで東京都が7.7%、埼玉県が6.1%。
高知県、秋田県、長崎県、山口県、岩手県、青森県を除く41都道府県で増加しています。

ただ、人口は減少している半面、世帯数は一貫して増加を続けている一方、1世帯当たり人員は2.27人と、平成27年の2.38人から減少となっています。

1世帯当たり人員が最も少ないのは東京都の1.95人で、次いで北海道の2.12人、大阪府の2.14人となっており、平成27年~令和2年の1世帯当たりの人員の増減を都道府県別に見ても、やはり全ての都道府県で減少しています。




ニュースフラッシュ

令和3年版の「国土交通白書」公表
「豊かな未来」を実現するべき、が基本的な考え方



令和3年版の「国土交通白書」がこのほど国土交通省から公表されました。
新型コロナウイルス感染症と災害の激甚化・頻発化を乗り越え、「豊な未来」を実現するべき、というのが今回の白書の基本的な考え方です。

ともすれば美辞麗句になりがちな白書ですが、時代は変わって、今回の国交省白書は、同省の施策全般の課題事項を総合的に取りまとめています。

災害リスクエリアは国土の21.5%であるのに対し、全人口の67.7%がそこに居住していることから、災害リスクの増大とともに老朽化インフラの増大を指摘。
また、コロナ禍の影響によりテレワーク利用率が増加したが、それでも世界各国と比較して利用率は低く、多様化を支える社会への変革の遅れが目立つ、と説明。

さらに、わが国のDX(デジタルトランスフォーメーション)は遅れているが、コロナ禍を契機に加速化しており、企業の75.5%がデジタル施策の推進を図っている、としています。





国土交通省「防災用語ウェブサイト」をオープン
防災情報や用語を簡潔に分かりやすく説明


本格的な台風シーズンを前に、各地で大雨による被害が発生していますが、国土交通省は6月29日、防災情報のポイントや留意点をまとめた「防災用語ウェブサイト」をオープンしました。


このウェブサイトは、水害・土砂災害の危険が高まった際に、行政機関から発表される防災情報や用語について、その意味に加えて情報が発表された時に求められる行動や、情報を報道・伝達する際の留意点などをまとめたものです。

これから夏場、秋口にかけて大雨・洪水、土砂災害にさらされます。
防災情報が行政やメディアから発表されますが、その時に使われる用語を完結で分かりやすい言葉で説明しています。

従来の専門的で分かりにくいといった指摘を踏まえて改良し、図版を多用して分かりやすく解説されており、防災用語の意味や災害時にとる行動の確認などに活用してほしいとしています。

今回は第一弾として、「氾濫危険情報」や「緊急放流」など、災害の切迫性が高まった際に、大雨警報(土砂災害)、緊急安全確保、線状降水帯、氾濫危険情報など避難等の行動を呼びかける防災用語79語を掲載しています。

「賃料減額」をトラブルに発展させないために

ところで、自然災害によって賃貸住宅が破損した場合、賃借人への対応と建物の修復といった課題が発生します。

とくに昨年4月1日にスタートした改正民法により、「賃借物の一部使用不能による賃料の減額」のケースが起きてきます。
物件の一部が滅失等により使用できなくなった場合に、それが借主の帰責事由によるものでない時は、使用不可の部分の割合に応じて賃料が減額されるとし、その内容は貸主と借主の間で協議することとしています。

自然災害であっても、「円満な賃貸借関係を継続する観点からも、貸主と借主双方が誠意をもって協議し、解決することが、望ましい基本的な対応になるものと考えられる」(国土交通省)のが基本ですから、迅速な話し合いが求められます。

また、関連するものとして、宅地建物取引業法の一部が改正され、売買、賃貸の不動産取引時の重要事項説明に、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地を、事前に説明することが義務づけられています。

「賃料減額」の取り扱いがトラブルに発展しないためにも、やはり早めの対応が望まれるところです。
不明な点がありましたらご相談ください。





賃貸経営ワンポイントアドバイス
賃貸借契約の解除と残置物の処理に関する
「モデル契約条項」(ひな形)が策定されました



残された家財(残置物)が円滑に処理できるように

アパート・マンションの入居者が死亡した際に発生する、部屋に残された家財類の処分がやりやすくなりそうです。

単身高齢者の居住の安定確保を図るため、賃借人の死亡後に契約関係及び居室内に残された家財(残置物)を円滑に処理できるように、賃貸借契約の解除と残置物の処理に関する「残置物の処理等に関するモデル契約条項」(ひな形)がこのほど、策定されました。

背景には近年、高齢者の単身世帯が増加している中、賃貸住宅等においては、相続人の有無や所在が明らかでない単身者が死亡した際の賃貸借契約の解除や居室内に残された動産(残置物)の処理への不安感から、高齢者の入居申込みを賃貸人が尻込みするという実状があります。

このような不安感を払拭し、単身の高齢者の居住の安定確保を図る観点から、単身の高齢者が死亡した際に契約関係及び残置物を円滑に処理できるように、国土交通省及び法務省において、賃借人と受任者との間で締結する賃貸借契約の解除及び残置物の処理を内容とした、死後事務委任契約等に係る「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を策定したものです。

仕組みは、60歳以上の単身高齢者の入居時に、「受任者」を決めます。
受任者に賃借人の死亡後に賃貸借契約を解除する代理権を与え、受任者に対し、賃借人の死亡時に居室内に残された家財(残置物)の廃棄や指定先へ送付する事務を委任します。
賃貸人は賃借人が死亡した時、委任契約の受任者に通知するものです。
受任者は賃借人の推定相続人か居住支援法人、管理業者等の第三者を想定しています。

なお、モデル契約条項は、その使用が法令で義務づけられていませんが、利用することにより、合理的な死後事務委任契約等が締結され、ひいては、単身の高齢者の居住の安定確保が図られることが期待される、と国土交通省では見ています。





ちょっと一服
マンション・アパート(一棟)の不動産価格指数
10年で4割アップ



国土交通省は年間約30万件の不動産の取引き価格をもとに、不動産価格の動向を指数化しています。

その「不動産価格指数」の令和3年第1四半期分の全国マンション・アパート(一棟)は、前期比0.2%増の139.2となっています。

平成22年の平均を100としたもので、過去10年で4割ほど上昇したことになります。
令和元年~2年にやや減少しましたが、昨年から上昇基調となり、これまでで最も高い指数となりました。

全国平均で過去最高の上昇ですが、3大都市圏が135.1に対して、3大都市圏以外の地域が152.9と全国平均を大きく上回っています。
その結果、アパート・マンション一棟の価格がここ10年で4割アップしたものです。

また、今年4月の全国における宅配便の再配達率が約11.2%である調査結果が国土交通省から公表されました。

一昨年より改善しているようですが、昨年よりは悪化しています。
賃貸住宅においても宅配ボックスの人気が高く、今後ますます宅配ボックスの需要は高まると見られます。